DXが進むペット先進国の欧米と、
今後の市場拡大が期待できるアジア
――日本のペットビジネスはまだまだ盛り上がりを見せそうですが、ペット先進国である欧米や、今後ペット市場拡大が期待されるアジアについては、どのように見ていますか。
生田目 ペット先進国の欧米ではすでにペットテックが数多く普及し、DXがかなりのスピードで進化しています。
また、アメリカの場合は、日本と違って動物病院も経営と診療は別で、診療の専門化が進んでいるのが特徴です。アメリカでは獣医師の社会的地位や収入が非常に高く、コロナ禍でもエッセンシャルワーカーの最初のグループに入っていたほどです。最近は動物医療をサブスクリプションで定額化し、会員制でコンシュルジュサービスを提供するようなビジネスも誕生しています。
アジアのペット市場では、圧倒的な規模を誇るのが中国です。中国は集合住宅では大型犬を飼えない規制があるのと、生活様式的にも猫を好む傾向があり、中国のペットというと猫の割合が7〜8割を占めます。
もちろん、経済的成長が著しい東南アジアでも、ペットを飼う層が増えていて、今後の市場の伸びが期待できるでしょう。
ペットビジネスの巨大マーケットがアジアに広がっていることを考えると、海外展開のチャンスも当然視野に入れていくべきです。なかでも動物医療の分野では、日本、韓国、中国の順に医療技術のレベルが高いと言われています。日本の最先端医療技術をアジアのペットビジネスに展開するのは、大きな可能性があると思います。
人とペットが共に、幸せに暮らせる社会を実現する
――ペットビジネスやその中核をなす動物病院の現状を伺う中で、生目田さんが繰り返しおっしゃっているのが「人とペットの幸せ」の実現です。ペットビジネス産業の発展のほかに、人とペットの幸せな暮らしの実現には何が必要となるでしょうか。
生田目 私は獣医師と飼い主をつなぐあらゆる領域をスムーズにして、ペットを飼いやすい社会、「QAL(クオリティ・オブ・アニマル・ライフ)」の実現を目指しています。そこにはペットビジネス産業の成長はもちろんですが、土台となるインフラや法整備も欠かせません。
例えば、ペットと一緒に歩きやすい歩道、ペット同伴で入れる店というような、ペットと暮らしやすい街づくり。また、ペットのパスポートやマイクロチップなど、個体識別を利用した形でペット関連サービスと連携し、あらゆるシーンでペットとの暮らしを便利にすることができるはずです。
家族の一員であるペットの幸せ――。それは人が幸せに暮らせる社会を実現することです。そしてあらゆる生き物にやさしい未来をつくることになります。