お金を受け取るか否か?
そしてついに、お金を受け取るか否かについて大論争が起きました。
上座部の人々は、金銭を受け取ることはまかりならん。
それは堕落に通じると主張しました。
一方で大衆部の人々は「浄財を貯めて教団を大きくしよう、そうしないとブッダの教えは広まらないぞ」と主張しました。
論争はなかなか決着がつきませんでしたが、結局は上座部が勝利を収めた模様です。
やはり、「ブッダの教えをそのとおり実践しよう」というのは正論です。
大衆部の人たちも仏教の発展を考えての発言でしたが、上座部の人たちにブッダの記録を読んでもお金を受け取ったとはどこにも書かれていないぞ、と突っ込まれてしまうと反論ができなくなったのです。
上座部に賛成した部派が11部派、大衆部に賛成した部派が9部派であったと伝えられています。
このときの大衆部から大乗仏教が生まれたというのは虚説です。
大乗仏教を主張した人たちが、上座部11部と大衆部9部を合計し、「小乗20部」と指摘している記録があります。
なお、インドで初めてインダス川とガンジス川にまたがる大帝国をつくったマウリヤ朝3代目のアショーカ王(在位BC268頃-BC232頃)の時代に、彼が積極的に仏教の教義を政治の指針としたため、仏教が大いに発展し、第3回目の仏典結集が行われたと伝えられていますが、これは仏教教団側の宣伝の可能性が高く、史実かどうかは定かではありません。
『哲学と宗教全史』では、哲学者、宗教家が熱く生きた3000年を、出没年付きカラー人物相関図・系図で紹介しました。
僕は系図が大好きなので、「対立」「友人」などの人間関係マップも盛り込んでみたのでぜひご覧いただけたらと思います。
(本原稿は、13万部突破のロングセラー、出口治明著『哲学と宗教全史』からの抜粋です)