プロスポーツの世界では、資金集めが欠かせない。大会の遠征費用、トレーニングのための場所費用、道具の購入費用など支出は大きい。アスリートが活動資金を得るためには、企業に働きかけ、スポンサーになってもらうことが重要だ。アメリカで研究が重ねられてきた「センスメイキング理論」を参考に、冬季北京オリンピックで結果を残したカーリング日本女子代表チーム「ロコ・ソラーレ」のスポンサー集めを考察する。(文/鈴木 舞)
ステークホルダーを共感させる
「センスメイキング理論」とは
企業がスポーツのスポンサーとなることには、メリットがある。著名なアスリートを広告塔として起用することで、自社の商品やサービスの訴求効果や認知度アップを狙うものだ。アスリートの好感度が高ければ自社のイメージアップが期待でき、ブランディング効果も高い。
スポンサー活動が地域振興につながり、CSR活動として注目されることもある。社員の福利厚生として、試合のチケットやイベント招待などの特典を受けられるケースも見られる。
このように、スポーツのスポンサーになると企業はメリットを得られるが、そのためにかかるコストも大きい。スポンサー活動の大きなメリットは広告面にあるが、企業が業績不振に陥ると、真っ先に削減するのは広告費であることが多いものだ。
だからこそ、スポンサーを集めるのは容易ではない。企業がスポンサーとして、アスリートやチームに投資したいと思わせるコツが必要なのである。
この点について、ミシガン大学のカール・ワイク氏を中心として研究が重ねられてきた「センスメイキング理論」に着目したい。センスメイキング理論は、下記の意味合いとして定義付けられている。
「組織のメンバー・周囲のステークホルダーが事象の意味について納得し、それを集約させるプロセス」(『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2016年10月号「世界標準の経営理論 第25回 センスメイキング理論」より)
スポーツのスポンサー集めに置き換えるならば、アスリートが活動するために、企業や地域などのステークホルダーに対して、共通の目標やメリットを抱かせることといえるだろう。スポーツ振興に共感を抱いてもらうといってもいいかもしれない。
スポーツ界においてセンスメイキングの力を発揮したリーダーといえば、2022年の北京オリンピックで銀メダルを獲得した、カーリング日本女子代表の本橋麻里氏ではないだろうか。