今回はコレステロール値の診断基準が5年ぶりに改訂された話題です。健康診断でもおなじみのコレステロール値の異常は、動脈硬化を進める主要なファクターです。
改訂の1番のポイントは「総コレステロール」という診断項目がなくなる点です。従来は総コレステロールが220mg/dlを超えると高脂血症と呼んでいましたが、これは実情にそぐわない面も少なくありませんでした。『知って得!医学知識』などで知られる池谷敏郎先生(池谷医院院長)も次のような問題点を指摘しています。
「特に更年期を迎えた女性はホルモンの関係で総コレステロールは上昇しやすいが、これは一過性でやがて戻ることが多い。にも関わらず、高脂血症ということで薬を飲みつづける人も多いんです」
実際、三井記念病院・総合検診センターの調査では健診で高脂血症と診断された人の25%が、新基準では「正常」になるとも報告しています。
病気でもないのに薬を飲む愚を避けられる――。その意味でも、この改訂は評価できると池谷先生は言います。
総コレステロールにかわって主要な診断基準となるのがLDLとHDLの2つです。前者は悪玉コレステロールとも呼ばれ、増えると血管の壁にたまって動脈硬化を促進させます。後者は善玉コレステロールとも呼ばれ、全身の細胞で余ったコレステロールを回収して肝臓に戻します。
新しい予防基準ではLDLは140mg/dl以上、HDLは40mg/dlを下回ると脂質異常症(高脂血症にかわる新たな病名)と診断されます。更年期の場合でも、総コレステロールの増加よりもLDLとHDLの構成バランスをチェックすることが、より大切な予防指標となるわけです。
血管は明日の健康を左右する大切な“ライフライン”。渋滞を起こしてこうした数値に赤信号が灯らないよう、日頃の生活習慣に気を配りたいものです。
竹内有三(医療ジャーナリスト)