華厳経とは?
大乗仏教では、浄土三部経の阿弥陀仏をはじめとして、数多くの仏が登場します。
上座(部)仏教では仏といえばブッダ一人、お釈迦様しか存在しませんでした。
大乗仏教ではブッダも多数の仏の一人である、と考えます。
上座(部)仏教の僧たちが、大乗非仏教と非難したのも無理からぬことでした。
華厳経の原典は、その成立がインドではなく、4世紀中頃の中央アジアであると推定されています。
「時間も空間も超越した絶対的な存在である仏の、華(はな)で飾られたような荘厳な教え」といった意味の経典で、華厳経と漢訳されました。
この宇宙を支配する仏は毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)と呼ばれます。
毘盧遮那仏には数多くの菩薩が仕えています。
仏の次の位の身分で、自分もいつかは仏になろうと修行しながら、世の衆生を救うために行動しています。
華厳経の教えは、中国に入って異民族の王朝の下で国家仏教になりました。
君主(皇帝)が毘盧遮那仏、部下の役人や軍人が菩薩、人民は救いを求める衆生(しゅじょう)(大衆)であると考えます。
そして皇帝の仏のような慈悲深い政治によって王道楽土が出現し、人民(衆生)は救われるのだという論理となるのです。
大乗仏教を読み解くこの本!
以上、主要な大乗経典について概略を述べました。
大乗仏教全体については、中村元『大乗の教え〈仏典をよむ〉3』(前田專學監修、岩波現代文庫、全2冊)が読みやすく書かれていますのでお薦めします。
『哲学と宗教全史』では、哲学者、宗教家が熱く生きた3000年を、出没年付きカラー人物相関図・系図で紹介しました。
僕は系図が大好きなので、「対立」「友人」などの人間関係マップも盛り込んでみたのでぜひご覧いただけたらと思います。
(本原稿は、13万部突破のロングセラー、出口治明著『哲学と宗教全史』からの抜粋です)