海外で活躍できる選手と、そうでない選手の「決定的なメンタルの違い」日本のスポーツ指導には、選手に「五感」をシャットアウトさせてしまうリスクがある

「スポーツメンタルコーチング」の手法を用いて、サッカーJリーグチーム、ラグビートップリーグチーム、バレーボールVリーグチーム、スノーボード日本代表チーム、ラクロス男子日本代表チームなどをサポートした柘植陽一郎氏(フィールド・フロー代表)。企業広報として10年間の活躍を経て、コーチングの道に進んだ稀有な存在だ。プロ選手だけでなく、部活動に取り組む学生・指導者・保護者とも並走する柘植氏の「コーチング論」をうかがった。海外で活躍できる日本選手と、できない選手の決定的な違いとは。(取材・文・撮影/編集者・メディアプロデューサー 上沼祐樹)

選手の「五感」を閉じさせる
女子バスケの試合を見た衝撃

 高校女子バスケットボール部の試合を観戦しに行き、衝撃を受けたときのエピソードをご紹介します。試合中にミスした選手に対して、監督は激昂。選手を呼びつけては、選手の顔に自分の顔を近づけて体育館中に響くような声で怒鳴っていました。

 監督にとっては真剣な指導かもしれませんが、選手は萎縮し、その状況から本能的に身を守ろうとします。五感をシャットアウトし、監督の激昂の圧力を受け取らないように反応しているように感じました。

 スポーツは本来、五感を解放して楽しむものだと思いますが、この体育館では反対に五感を閉じさせるようなことが起きてしまっていました。「スポーツに関する課題解決は、指導者が厳しく指導しないと実現できないものだ」という思い込みが、まだまだ多くの指導現場に残っているように感じます。スポーツは本来好きでやるもの、自然と様々な工夫をしてしまうもの、だからこそそうした気持ちやアイデアがどんどん湧き出てくるような場をつくればよいのだ、というように、もう少しシンプルに考えられるとよいと思います。