もし、あなたが上司に対して感情をもって話してしまったら、上司も感情をもって返してきますよね。上司がどうだというのではなく、「私はこう思う」というように、上司の考えを否定するのではなく、同じテーブルの上に2つ目の考えをフラットに乗せてみる。否定して別の考えではなく、肯定しつつ2つ目の考えを加えてみるイメージです。

上司はどんな生き方をしてきたか?
相手視点で捉えることのメリット

スポーツメンタルコーチが指南!失敗できない仕事に必要な「ルーティン」「目線」とは

 また一度、上司の立場になって考えてみるという視点も大事です。具体的な方法をご紹介しましょう。

 まず、上司の名前を紙に書いて、椅子に貼ります。そこに座って、「この人は、今までどんな生き方をしてきたのだろうか。どんな子ども時代を過ごして、どのような考えで受験や就職をしたのだろう。さらには、どんな上司の下で働いて、どんな成功や失敗をしたのだろう。家族とはどのような関係か。そして今、どんな思いで、仕事をしているのだろう』というところまで想像するんです。

 こうすることで、いつもより少しだけ相手の立場に立つことができるはずです。相手の立場に立つことができると、相手がどのようなときにどのような言い方をされると意見を受け取りやすいのかについて、想像力が広がります。

 このようにコミュニケーションにおいては、相手に対して何を言ったかではなく、相手が何を受け取ったかという視点で捉えることが大切です。そうすることで、一方通行ではないコミュニケーションが取れるようになるのです。我々はどうしても自分目線で考えてしまいがちですが、相手の立場で考えることとのバランスをとることで、さらなるパフォーマンスの発揮につながるのではないでしょうか。

柘植 陽一郎(つげ・よういちろう)/一般社団法人フィールド・フロー代表。1968年生まれ、スポーツメンタルコーチ。専門はメンタル、コミュニケーション、チームビルディング。KDDIグループにおいて10年間広報に従事した後、2005年にプロコーチとして独立。2006年より本格的にアスリートのサポートを開始。個人競技・団体競技を問わず、プロ・オ リンピック代表から中学高校部活動まで幅広くサポートする。また日本全国で、 選手・指導者・トレーナー・スポーツ関係者に向けてメンタル・コミュニケーショ ン・チームビルディングに関する講演を行っている。著書 に『最強の選手・チームを育てるスポーツメンタルコーチング』(洋泉社)、『成長のための答えは、選手の中にある』(洋泉社)

*柘植陽一郎・一般社団法人フィールド・フロー代表に聞く(4)に続きます。