血圧値写真はイメージです Photo:PIXTA

 最近の食事療法では「何をどれだけ」食べるかに加えて、「いつ」食べるかを考慮する時間栄養学が注目されている。

 一般にも知られているのは1日の食事を日中の12時間以内に済ませ、毎日一定の絶食時間を設ける方法だろう。持って生まれた体内時計に沿って食事をすることで、代謝リズムが安定し、体重の低下や血糖値の改善が期待できる。

 栄養素ごとに摂取タイミングを調べる研究も行われている。

 早稲田大学の研究グループは、モバイルアプリの「あすけん」で収集したデータとアンケート調査から、塩分摂取量の多寡を表す「ナトリウム/カリウム比」――値が高いと食事中の塩分が多い、もしくはカリウムを含む野菜・果物が不足していることを意味する――と上の血圧(拡張期血圧)値の関係を調べた。

 あすけんは利用者が撮影した日々の食事内容をアップすると、AI管理栄養士から無料のアドバイスが届く食生活改善アプリだ。利用者の7割が女性で、95%はダイエットが目的だという。今回の解析では、2405人(平均年齢45.95歳、男性29.39%)が回答。栄養摂取量については1カ月の平均値を利用した。

 性別や年齢などの影響を調整して、1日3食+間食と血圧値との関連を解析した結果、昼食と間食での塩分過多、カリウム不足は血圧値の上昇に強く働くことが示された。逆に昼食でカリウムをしっかり摂ると血圧が下がる。

 夕食のエネルギー量と脂質、コレステロールおよび飽和脂肪酸の摂り過ぎも血圧を上げる。夕食で「肉をがっつり食べる」派は、食事の内容を見直すか、夕食の時間を早めるなど対策を考えたほうがよさそうだ。一方で、朝食のタンパク質と昼食の食物繊維は血圧を下げる方向に働いた。

 研究者は「アプリの利用者は元々、健康意識が高い人」としたうえで、「ナトリウムとカリウム、そして脂質を摂るタイミングを変えることで、高血圧を予防できる可能性」を指摘している。

 朝食抜き、昼食は単品を早食い、そして夕食で帳尻合わせ、という食生活は改めていきましょう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)