中国の賃金上昇がしばしば問題になる。
実際、中国における賃金上昇は著しい。最近では、15%程度となっている。
賃金上昇の背後には、中国経済が「ルイスの転換点」を迎えたことがあると言われる。これは、工業化の進展によって、農業部門の余剰労働力が底をついた状態だ。
中国の賃金高騰は、生産拠点を中国に持つ外国企業にとって大きな関心事だ。これまで日本など世界の先進国企業が生産拠点を中国に移したのは、賃金が低かったからだ。しかし、現在の状況が続くと、あと数年で中国の賃金水準はメキシコを上回るとの推計もある。だから、中国生産の有利性はもう終わりで、賃金がより低いインドやベトナムやミャンマーなどに生産拠点を移すべきだとの意見もある。こうした考えは、しばしば「チャイナプラス1戦略」と呼ばれる。
したがって、中国の賃金事情を的確にとらえる必要がある。
また、最近では日本企業は中国を巨大市場として見るようになったのだが、その戦略が成功するか否かは、中国の購買力がどれだけ成長するかによる。それを判断する基礎的なデータは賃金だ。賃金は生活水準を決め、需要を決めるからである。中国でどのような製品がどれだけ売れるかを考えるにも、賃金を正確にとらえる必要がある。