進化し続ける組織の条件(3)
全体を見渡し、各要素の関係性に目を凝らす

小田さんPhoto by Teppei Hori

小田 ピーターは、どのような哲学も、「関係性の質が良いかどうか」で、良くも悪くもなると言っています。

 テクノロジーも同じで、テクノロジーのボトルネックを考えるとき、(テクノロジーを取り巻くさまざまな要素との、つながりの束の)「どこをどう調整すれば、どこが良くなっていくか」、その関係性に着目する、ハイコンテクストを意識して見ていく、このことが大事なんだと思います。

 今は、環境面、社会面、経済面、いろいろなコンテクストがあるので、それぞれのコンテクストを見ながらやっていく。

 ビジネスや産業は、国外では、規模、スピード、効率、ローコストを追求しています。日本的にやっていると、「ガラパゴス」と言われ、海外の競合に比べ、どうしても小粒になってしまいがちで、苦労している企業が多いでしょう。

福谷さんPhoto by Teppei Hori

 同じ土俵で戦うといっても、規模、スピード、効率、ローコストでは、GAFAや中国の企業に追いつけない。

 だからこそ、どれだけ私たちが「関係性」を見ることができるか、関係性を修復するヒントを見つけられるか、そこにチャンスを見いだすことができるか。

 これが、ハイコンテクトな文化をもつ日本の、これからの進路に対する、ピーターの示唆だと思います。

 ガジェットやデバイスをどう高速で高度化するかではなく、それらを使いながら、ユーザーにとって、自然なペースで関係性が作れて、コンテクストの相互理解が最大化できるようなビジネスモデル、ツールやアイデアがこれから求められてくるでしょう。

 あるいは、ここが足りないから埋める、それによって、ユーザーが何かできるようになったり、エンパワーしたりする。そのようなテクノロジーは、間違いなく価値があり、感謝されるはずです。

 マスのスケールにはならないかもしれませんが、多様性・個性がある人たちにとって、そして地域コミュニティにとって、「何が必要なのか」というコンテクストを見ていくことに関して、日本人には強みがあると、彼も言っています。規模、スピード、効率、ローコストを追求するのではなく、差別化の方向を探っていく。そこを見直していくべきではないでしょうか。

 そして、その原動力は、組織、そして社会におけるリレーショナル・フィールドの質にこそあるのではないかと、感じています。

――ありがとうございました。