ニコンの一眼レフ「開発撤退」報道に異議あり、復活もあり得るといえる理由picture alliance/gettyimages

ニコンが一眼レフカメラの新モデル開発から撤退したという報道が話題を呼んだ。一眼レフカメラ事業そのものから撤退すると誤解する人々もいたが、実際は既存モデルの生産・販売は続く。だが筆者はこの「開発撤退」というセンセーショナルな書きぶりに違和感を抱いた。ニコンは一眼レフカメラボディの新規開発を停止していることを以前から認めており、必ずしもニュースとはいえないテーマだったからだ。さらに、将来を見据えるとニコンが新しいボディを開発する可能性もあると考えている。その理由を詳説する。(ジャーナリスト 本田雅一)

ニコンの一眼レフ「開発撤退」報道に
筆者が覚えた違和感

 去る7月12日、日本経済新聞電子版に「ニコン、一眼レフカメラ開発から撤退 60年超の歴史に幕」と題したスクープ記事が掲載された。

 その内容は、ニコンが一眼レフカメラの新モデル開発を停止しており、今後はミラーレスカメラに経営資源を振り向けるというものだ。あくまで「新規で開発する計画がない」という報道であり、従前から知られていた話だった。

 記事には「既存モデルの生産や販売は続ける」という旨の記載もあり、事業そのものを継続しない判断ではないことは明らかだ。

 しかし、「撤退」「歴史に幕」という言葉から、ニコンが一眼レフカメラ事業そのものから撤退すると誤解する人々もおり、このニュースはネットで大きな話題を呼んだ。

 この報道に対し、ニコンは「憶測によるもので、当社が発表したものではありません」「デジタル一眼レフカメラの生産、販売、サポートは継続しており、ご愛用のお客様には引き続きご安心してご利用頂ければと思います」と反論した。

 このステートメント(声明文)には、ニコンが「生産」「販売」「サポート」を継続すると書かれているものの、日経の指摘通り「開発」の文字はない。細かく掘り下げれば、記事とステートメントに大きな乖離(かいり)はない。

 両者の主張に大きな差異がないにもかかわらず、ニコンが「憶測」と強い言葉で反論しているのはなぜか。