自主的に「ゴールデンウィーク」をつくろう

【精神科医が教える】やる気が起きない、会社を辞めたい…。疲れすぎたときの「心と体の休め方」とは?Photo: Adobe Stock

――気持ちが落ち着いてくると、今の仕事が自分に合っているのか、ということに改めて気づく人もいそうですね。

川野:そうですね。たとえば「会社を辞めたいな」と思う場合、その気持ちの原因が、本当にミスマッチからきているものであると確信できれば、辞めるという選択も必要でしょう。

 自分の特性やコンセプトと現状の仕事がまったく合っていないのに生涯続けなければならないというのは、時に非常に大きな苦悩を生み出してしまいます。

 一方、一時的に疲れていたり、行き詰まったりすることで、本来は生き生きと取り組める仕事がうまく回っていないというケースもあるのではないでしょうか。

 そんなときに私が患者さんにおすすめするのは、「数日間、有給を取って休んでみましょう」ということです。

 大体、最低でも3泊4日ぐらい、できれば1週間に前後の土日を加えて9日間仕事を離れていただくことをおすすめしています。

――9日間だとゴールデンウイーク並みですね!

川野:そうです、自主的なゴールデンウイークをつくるわけです。

 暦上のゴールデンウイークは、自分以外の人も休みをとっていますし、友だちや家族との予定をつめ込もうとしてかえって忙しくなってしまうこともありますよね。

 だから、ゴールデンウイークはゆっくり休む時期としてはあまり向いていないんです。

 でも自分が自分のためだけにつくった有給のゴールデンウイークは、すべての時間を自由に使えますから、自分と向き合うには絶好の機会になります。

 平日にのんびり海辺を歩いてみたりとか、人っ子ひとりいない観光地に行ってみたりとか。湯治場のひなびた宿に滞在してみるのもいいでしょう。

 そうすると、日頃は仕事でがんじがらめになって、自由な発想を失っていた心が本来の力を取り戻し、自分の本当の姿が見えてくるものです。

 すると、「やっぱり自分はあの会社だからこそやれたこともいっぱいあるし、これから先、できればこんなポジションで働けるようになりたいな」と現在の職場を希望を持って見ることができるようになります。

 あるいは「自分が昔から本当にやりたかったことを思い出した! それを成し遂げるためには、今の会社でそれは無理なんだ」と気づいて転職活動を始める決心がついたりと、自分自身にとって最良の働き方を見つめ直すきっかけになることもあるでしょう。

――自主ゴールデンウィーク、いいですね!

 では最後に、がんばりすぎて消耗しているダイヤモンドオンラインの読者にメッセージをお願いします!

川野:「最近ちょっと疲れているかな」「去年に比べて今年のほうが体が重い」「眠りが浅くなった」「頭の回転が遅くなった気がする」など、何か少しでも違和感を感じたら、少し時間をとって自らの心と体に意識を向けて過ごしてみるようにしてください。

 自分は何を欲しているのだろう? 本当は少し休んだほうがいいのではないか? 大切な人と過ごす時間をもっとつくりたいと思っているのではないか? と、自分の胸に手を当ててひと時のあいだ考えていただきたいのです。

 考えを見つけたあとで、どう行動するかについては、『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』の本の中に数多くの知見が散りばめられていますから、ぜひご参考にしていただければ幸いです。

 体調不良の原因は必ず、体か心のいずれかにあります。

 そしてその原因が心にある場合、体調不良をきっかけとして自らの心と向き合うことによって、人生を豊かで彩りのあるものするための大切な気づきが得られるでしょう。

 自分自身のことも、周りにいる大切な人たちのことも愛することができるような、ウェルビーイングに満ちた人生になっていきます。

 もし最近眠れないな、という方がいらしたら、ただ眠れないという現象が起きているというだけですませずに、自らの心身に目を向けることを始めるチャンスと考えてみていただきたいと思います。

川野泰周(かわの・たいしゅう)
精神科・心療内科医/臨済宗建長寺派林香寺住職
精神保健指定医・日本精神神経学会認定精神科専門医・医師会認定産業医。
1980年横浜市生まれ。2005年慶應義塾大学医学部医学科卒業。臨床研修修了後、慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科医として診療に従事。2011年より建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行。2014年末より横浜にある臨済宗建長寺派林香寺住職となる。現在寺務の傍ら都内及び横浜市内のクリニック等で精神科診療にあたっている。
うつ病、不安障害、PTSD、睡眠障害、依存症などに対し、薬物療法や従来の精神療法と並び、禅やマインドフルネスの実践による心理療法を積極的に導入している。またビジネスパーソン、医療従事者、学校教員、子育て世代、シニア世代などを対象に幅広く講演活動を行なっている。
主な著書に『会社では教えてもらえない 集中力がある人のストレス管理のキホン』(すばる舎)、『半分、減らす。「1/2の心がけ」で、人生はもっと良くなる』(三笠書房)、『精神科医がすすめる 疲れにくい生き方』(クロスメディア・パブリッシング)、『「精神科医の禅僧」が教える 心と身体の正しい休め方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。