2012年末に行われた衆議院選挙では自民党が294議席を獲得し、圧勝。安倍新政権が誕生した。「民主党政権への不信任によって自民党が返り咲いた」という見方が日本では強いが、領土問題を巡って関係が緊迫化する中国のみならず、アメリカなどの主要国も自民党政権の誕生、石原慎太郎氏率いる日本維新の会の躍進を好意的には見ていないようだ。図らずも世界から“右傾化”が懸念されることとなった日本は、これから世界政治のなかでどう見られていくのか。前回の欧米・中東編に続き、今回は日本を中心にした2013年の東アジア情勢について、東京大学法学部政治学研究科・藤原帰一教授に話を聞く。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)

“日本の右傾化”に世界中が警戒
安倍政権の賞味期限は「参院選」か

――先の衆議院選挙では自民党が圧勝した。安倍政権発足によって日本は今年、世界各国からどのように見られるようになるか。

ふじわら・きいち
東京大学法学部法学政治学研究科教授。1956年生まれ。専門は国際政治、東南アジア政治。東京大学法学部卒業後、同大学院単位取得中退。その間に、フルブライト奨学生として、米国イェール大学大学院に留学。東京大学社会科学研究所助教授などを経て、99年より現職。著書に『平和のリアリズム』(岩波書店、2005年石橋湛山賞受賞)など

 不安定要因になる可能性がある。その焦点は歴史問題だ。中国と韓国の反発については日本でもよく知られているが、アメリカ、ヨーロッパも安倍政権や日本維新の会の躍進を見る目が非常に厳しいことに注意しなければならない。歴史問題が中国・韓国の二国との関係だけだと考えるなら、たいへんな誤りだ。

 私自身は、日本の有権者が右傾化したから自民党の圧勝や日本維新の会の躍進が実現したとは考えていない。有権者は民主党政権の下での不安定にかわる安定を求めて、自民党に投票したに過ぎないからだ。また、変化には様々なものがあるが、日本維新の会が唱える変化(地方分権、官僚国家論の打破、中国へ毅然とした態度をとるなど)の方が、日本未来の党(反原発、対米関係の見直し)などの示したものよりも受け入れやすかったのだろう。

 昨年は、尖閣諸島をめぐる中国との軋轢が拡大した。この背景に中国による外洋への軍事的展開があったことは事実であり、日本政府の責任を問うのはバランスを失している。だが同時に、尖閣諸島を実効支配しているのは日本であることも注意すべきだろう。領土問題は打開が難しいからこそ、実効支配している側は挑発行為を控える必要があるからだ。