既に日銀の金融政策決定会合に参加する審議委員のうち2人がリフレ派から慎重派に交代しており、これは金融緩和の軌道修正に向けた布石ともみられているため、残り8カ月程度となった黒田総裁の後任が誰になり、どのような金融政策を取るのかに注目が集まる。

 ただし、黒田総裁の後任が誰になっても、金融政策が大転換することは考え難いとの観測が現状では多数を占めていることも事実だ。

 G7ではGDP比で256%超、金額にして約1026兆円という極めて多い国債発行残高を有する日本は、金融引き締めによって利払いが増加すれば(1%に上昇しただけで10兆円の利払いが発生する)国内経済を圧迫してインフレが加速し、GDPギャップが拡大して国内需要が減退することで、現状よりも景気が後退することが見込まれるからだ。

 つまり、政策金利引き上げによる金融の引き締めは、黒田総裁が目指した市場への資金大量投入による景気刺激策で、需要と所得の拡大に結び付けるもくろみとは正反対の方向に進みかねないリスクをはらんでいる。

 したがって、住宅ローンの金利は、基本的には金融緩和策の維持・継続によって低位に据え置かれる公算が大きいと言えるだろう。住宅ローンを組むうえで唯一の不安要素は、この6~7月に発生した指し値オペでも回避しきれない長期金利の上昇ということになる。日銀が半ば恣意的に抑え込もうとしても市場の反発で抗し切れない事態は今後も発生する可能性はあるから、住宅ローンを借り入れるなら変動金利で借り入れるべきだというのが、現時点での最良の選択と言える。

 金利の上昇リスクに常にさらされている固定金利と、金融緩和下ではほぼ上昇することが想定できない変動金利、金利水準自体も重要なポイントには違いないが、その特性を理解した上で住宅ローンの申し込みをしたいものだ。

(記事は個人の見解であり、執筆者が所属する会社の見解を示すものではありません)

(LIFULL HOME’S総合研究所・副所長チーフアナリスト 中山登志朗)