ソニーに期待する「新しいモノ」の創造

 今後のソニーに期待したいことは、他社が生み出した新しいモノの需要に支えられるのではなく、自らが変革の先駆者になることだ。

 米アップルがiPodやiPhoneなどのヒットを実現した背景には、故スティーブ・ジョブズのソニーに対する尊敬や憧れがあった。それは、次から次に、誰もが思いもしなかった新しい、満足度の高いモノを生み出して、世界を魅了する力と言い換えられる。

 世界全体でクラウドやメタバースなどソフトウエア開発が加速している。自動車の電動化や自動運転技術の開発も同様だ。ソニーはいずれの分野でも取り組みを強化している。しかし、何がソニーの成長加速の起爆剤になるかは、依然としてはっきりしない。

 ウォークマンのヒットからいえることは、ソニーには全く新しい発想を実現することによって新しいモノを創造し、新しい市場=需要を生み出す力がある。ソニーはその力を発揮することによって生き残ってきた。

 新しいモノがどういったものか、言葉で表すことは難しい。突き詰めていえば、「ドラえもん」が出す道具のように、人々の生活を劇的に便利にしてくれるモノを生み出すことができれば、ソニーが世界トップの地位を目指すことはできるだろう。大胆な発想の転換と実現が求められる。

 見方によっては、現下の世界経済はソニーが新しいモノの創造を目指すチャンスだ。アップルでさえ採用を抑制して経営の守りを強化しなければならなくなっている。

 ソニーは既存事業の効率性を高め、必要に応じてリストラを実施することで、新しい取り組みを加速することができるだろう。生産の外注や、光学、音響、AIの開発強化のために他社との連携も強化するべきだ。

 その上でソニーには、かつてのウォークマンのように世界に衝撃を与える全く新しいモノを生み出してもらいたい。それが実現すれば、ソニーの成長だけでなく、わが国経済全体の活力にも大きなプラスの効果があるはずだ。