自分の強みがわからない人に刺さる3分類

――本書は、下記の構成で、単なるノウハウにとどまらない具体的な思考と行動のアドバイスに満ちています。なかでも特に反響が大きかったのは、どのあたりでしたか?

はじめに「残酷な世界の“希望”とは何か?」
第1章「やりたいことがわからなくて悩む君へ」
第2章「学校では教えてくれない世界の秘密」
第3章「自分の強みをどう知るか」
第4章「自分をマーケティングせよ」
第5章「苦しかったときの話をしようか」
第6章「自分の“弱さ”とどう向き合うのか?」
おわりに「あなたはもっと高く飛べる!」

 僕自身は第5章「苦しかったときの話をしようか」に心を持っていかれましたが、第3章の自分の強みを見つけるノウハウは反響が大きかったですね。

――「Tの人、Cの人、Lの人」の3分類ですね。自己診断がしやすかったです。

亀井 予想以上に世の中には「自分の強みがわからない」と悩んでいる人が多いんだなと思いました。そこは森岡さんの狙い通りです。さすがです。

単なるお人よしになるな

――今から手に取ってみようという方に是非お勧めしたいページがあれば教えてください。

亀井 繰り返しになって恐縮ですが、第5章の「苦しかったときの話をしようか」は必読です。何度読んでも泣ける原稿です。原稿を読んで泣き、初校が出て泣き、再校でも念校でも、校了でも泣きました。

 森岡さんは極めて論理的な原稿を書かれる方ですが、その一方で、筆が乗ってくると情熱が指先から溢れ出すことがあります。そういうときの原稿はマグマのように熱いんです。めちゃくちゃ神がかっているんです。僕はその瞬間に出合いたくて、この仕事をしているのかもしれません。

――第5章に出てくるさまざまな箴言……たとえば
「無力なサラリーマンである以上は『後ろ向きな仕事』は避けられない。ならばどうするか? 会社にとって数多くいる消耗品のような『人材』ではなく、辞められたら本当に困る『人財』として組織に認識されること。それでようやく、ある程度の対等さで会社と交渉できるようになる。」
「プロの世界で最初から友情や親切を期待するのは単なる『お人よし』であり、淘汰される『負けのマインド』であることをおぼえておいて欲しい」
など、ほかにもいろいろありますが、胸に刺さりました。

亀井 森岡さんみたいにスーパーマンのように見える人でも、第5章を読むと「こんなに苦しんだ時期があったんだ」と知らされます。それに比べたら、自分の悩みなんてどれだけちっぽけなものか、と思えます。

 森岡さんは孤立無縁の中で敗北寸前まで追い込まれますが、最後の一歩で踏みとどまります。猛烈な逆風の中、ただただ自分の信じることだけを愚直に押し進めたのです。すると、時間はかかりましたが、やがて種が芽吹いて花が咲き乱れる季節がやってくる。それこそがビジネスの面白さであり、生きることの喜びなのだと思います。

――「You are our liability!(お前はお荷物だ!)」と他部門の大物から面罵されるなど、本当に胸が詰まるシーンがいろいろありましたが、おっしゃるビジネスの面白さに到達するところまでのジェットコースターのような展開を、ぜひ読んで実感いただきたいですね。

この本は日本の未来を変える

――ところで、この本は書店員さんからも当初から非常に評価が高かったと聞きました。

亀井 発売直後に、松本大介さん(元さわや書店フェザン店店長)がこんな感想を寄せてくださいました。

「1冊の本と出合って、『この本は、日本の未来を変えるのではないか』そう感じることは、なかなかあるものではない

 本当にそう思います。これから就職活動をする大学生や、就職はしたけれど自分の仕事に悩んでいる人がみんなこの本を読んでくれたら、日本はもっと元気になるかもしれません。こういう本を作りたくて、僕は編集者になったのだと思います。

 これほどの名作に出会えることは、人生でそう何回もあることではありません。頭に血が昇った僕は(まあよくあるんですが)、新聞広告のコピーにこう書きました。「10年に1冊の傑作ビジネス書!」。それを書き直さずにそのまま掲載してくれた宣伝部には感謝しています。

 しかし発売1年目で売れたのは10万部程で、ちょっぴり不満でした。ところがテレビで何度も紹介されると、その度に売上が積み上がっていったのです。

天才と出会えた幸運

――ビジネス書で10万部はすごいことですが、林修先生の「日曜日の初耳学」をはじめ、テレビでも取り上げられて大きな反響がありました。

亀井 おそらく林先生が本書を読んでくださったことがきっかけだと思います。「日曜日の初耳学」は当初クイズがメインの番組でしたが、旬の人物にインタビューするコーナーが始まっていました。林先生ならこの本の魅力をわかってくれるに違いない、と思って送ったのです。とはいえ、森岡さんが「日曜日の初耳学」に出演したのは本を送ってから1年後くらいですから、直接の原因ではないかもしれないですけどね。

 気づけば、発売から4年目で本書はついに30万部を突破しました。テレビの反響もあるかもしれませんが、内容がよかったからこそテレビでも取り上げられたのだと思います。

 でもそれで満足しているわけではありません。森岡さんからは発売前に「50万部を目指しましょう」と真顔で言われたのです。

「そんな無茶な」と内心は思いましたが、「もしかしたらできるかもしれない」とも思いました。ダイヤモンド社には『入社1年目の教科書』みたいに何年もかけて50万部を突破したロングセラーがあったからです。だから50万部を売ることが今の目標です。

――良書として定着してきて、「50万部突破」は実現可能な目標ですね。

亀井 こういう言い方を森岡さんは嫌うんですが、森岡さんのような“天才”に巡り合えたことは本当に幸運でした。僕より優秀な編集者はたくさんいると思います。でも、僕より森岡さんの考え方を理解している編集者はいません。それは断言できます。

 その証拠に、森岡さんが今まで6冊の本を出されてきたなかで、僕が編集した本は売上の上位4冊を占めているのです。それが僕の誇りです。

稀代のマーケター森岡毅さんに転職を報告したとき掛けてもらった言葉