その理由は、党政調会長という重要ポストから、人事権のない「特命大臣」に「格下げ」されたと捉えたからではないか。また、安倍派の後継候補の一人とみられている萩生田光一氏に政調会長の座を奪われたことも、相当に悔しかったのだろう。

 だが実は、高市氏は政調会長としての評価は決して高くなかった。政調会長就任直後の昨年11月の衆院選では「党内協議を十分に経ないまま、党の公約を独善的に書き上げた」と内部から批判が噴出した。

 また、年金受給者に1人当たり5000円を給付する案や、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の凍結、緊急経済対策の取りまとめなどで、茂木幹事長とことごとく対立。公明党との協議から外された。

 経験豊富な実務家の高市氏だが、政調会長としての指導力・調整能力には疑問符が付けられていたのだ。

高市氏の専門性と実務能力が
宰相への道を開くわけではない

 高市氏と茂木幹事長は、「ポスト岸田」を争うライバル関係にある。だが現時点では、岸田首相から信任されて留任となった茂木幹事長とは大きな差がついたといえるだろう。

 茂木幹事長も、河野氏や高市氏と同様に“我が強い”政治家として知られるが、指導力・調整能力があることを示すことで、評価を高めたようだ。

 高市氏は今後、経済安全保障相として高い専門性と実務能力を発揮するだろう。しかし、それが「未来の宰相」への道を開くわけではない。河野氏同様、宰相の条件は実務能力だけではないのだ。

 前回の自民党総裁選で敗れた高市氏は、その指導力・調整能力に大きな疑問符が付いたことで、宰相候補としてはさらに後退してしまった。

 ただし、安倍晋三元首相の暗殺事件の後、高市氏が政調会長として最後に取り組んだ仕事については一定の評価ができる。

 高市氏のTwitterによれば、日本の「宗教法人法」とフランスの「セクト規制法」を読み込み、霊感商法対策を盛り込んだ「宗教法人法改正案」の概要をまとめていたという。しかし、政調会で具体的に検討を始める前に、政調会長辞任が決まってしまった。
 
 繰り返すが、筆者は自民党と旧統一教会の関係は「組織的な関係」であり、個々の議員に責任を押し付けるのではなく、党が責任を持って解決すべきだと考える。

 具体的には、岸田首相が主導して旧統一教会に「反社会的な活動」の是正を直接求めるべきだ。場合によっては「宗教法人」としての認可を取り消すことも辞さないという強い姿勢を示すことも重要だろう。

 高市氏が手掛けようとしていた改正案は、そのための法的根拠になっていた可能性もある。

 高市氏は「(改正案は)残念ながらお蔵入り」と無念さをにじませているが、後任の萩生田政調会長は、ぜひこれを引き継いで検討してもらいたい。