河野太郎は「令和の中曽根康弘」になれるか!?縦割り行政打破で見える道河野氏は首相の座を奪取できるか Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

菅義偉内閣が発足して間もないが、河野太郎行革担当相は早速「縦割り110番」を設置するなど、動き出した。改革には大きな問題が立ちはだかるが、彼が得意とする「大衆迎合的」なやり方をせず、堂々と本質的な問題に取り組めば、首相になる日は遠くない。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

河野氏の前に立ちはだかる壁
「大衆迎合的」手法は避けるべきだ

 菅義偉内閣が発足した。組閣・党役員人事を終えた首相は、記者会見で「国民のために働く内閣を作る」と述べた。そして、新型コロナウイルス対策と経済再生を最優先に、行政の縦割り打破や規制改革に取り組む決意を示した。

 菅首相は、行革・規制緩和について、河野太郎行革担当相に具体的な指示を出している。国民から電話や電子メールで「縦割り」の弊害の具体的な事例を通報してもらう窓口「縦割り110番」を設置する。行政の目詰まりを全部明るみにし、河野氏から1カ月ごとに報告をさせるという。だが、このようなやり方ではうまくいかないだろう。

 前回指摘したように、河野氏は、スタッフもリソースもなく、成果を出しようがないのだ。行革担当相のオフィスは内閣官房にあり、スタッフは総務省の旧総務庁系の部署と内閣人事局からの寄せ集めだ(総務省HP『行政管理局』)。これでは、質量ともに、行革・規制緩和を支えるには不十分だ。

 だが、河野氏はそんなことは百も承知だろう。持ち前の発信力を生かして次期首相候補として得点稼ぎに徹するのではないか(本連載第253回)。河野氏が、縦割りの弊害の具体例を記者会見やSNSを使って派手に訴える。国民は拍手喝采する…。そこまではいいかもしれない。

 しかし、各省庁が縦割りの打破にすんなり同意するはずがない。担当大臣まで怒り出すかもしれない。権限を守るために必死で抵抗するだろう。しかし、河野氏は抵抗を打ち破るための手段を持っていない。

 結局、河野氏は世論に直接訴えるしかなくなる。記者会見を開き、SNSを駆使して、官僚がいかに既得権にしがみついているか、猛批判を展開する。正義に燃える国民の怒りが爆発して、「官僚バッシング」で大炎上する。

 官僚に対して最後まで抵抗すれば、たとえ改革が進まなくても、世論は河野氏を称賛し、次期首相候補として存在感が高まる。だが、河野氏それで良しとするのだろうか。

 河野太郎という政治家が本気で首相の座を狙うなら、小さな問題を取り上げて国民の怒りをあおって人気を得ようとする「大衆迎合的」なやり方はよくない。政治家としての品格を疑われ、長い目で見れば国民の信を失うからだ。それならば、「縦割り行政」の本質的な問題を堂々と解決し、誰もが「首相候補」と認める「大政治家」を目指したらどうか。