初めて指導力が試される萩生田氏は
説明から逃げるべきではない

 注目すべき人物の3人目は、この萩生田氏である。萩生田氏は、河野氏や高市氏とは逆に、周囲をまとめる立場に初めて置かれ、宰相候補としての指導力・調整力を試されることとなった。

 萩生田氏は、安倍元首相の側近として、汚れ役も辞さない仕事ぶりで実績を積み重ねてきた、たたき上げの政治家だ(第253回・p5)。一方、これまで指導力・調整力を求められる役職を務めたことはない。政調会長は、初めての「まとめ役」である。

 萩生田氏にとっては、たたき上げの実務家から、安倍派の後継者、そして「未来の宰相」候補に浮上できるか重要な時を迎えた。しかし、政調会長就任直後、旧統一教会との深い関係が明らかになり、厳しく批判されている。

 そんな萩生田氏には落選経験がある。一代でたたき上げた政治家であり、選挙基盤が弱く苦労をしてきた。安倍元首相を守る汚れ役もやってきた。河野氏のような恵まれた環境にない中、旧統一教会の集票力を借りざるを得なかったことについては、同情の余地もある。

 しかし政調会長という立場に就いたからには、自らの過去の問題や、党と旧統一教会との関係についての説明から逃げることは許されない。責任を持って説明責任を果たし、問題解決に動くべきだ。宰相の座を目指すにしても、そこから逃げるようでは将来はない。

 要するに、宰相を目指すためには、実務能力だけでは不十分である。指導力・調整力を認められ、多くの政治家から「みこしとして担ぎたい」と思われるだけの器量がないといけない。

 そして今回の「岸田人事」からは、河野・高市氏は「未来の宰相」の候補から後退し、萩生田氏は初めて器量を試される立場に置かれたことが読み取れる。岸田政権と三者の将来はどうなるのか。今後に注目である。