ケース1:遺言で子どもたちが「均等分け」の場合

 例えば、あなたにA、B、Cという3人の子(相続権者)がおり、全財産を民法の規定通りに3等分してあげたいと思って遺言をしたためたとしましょう。すると、どうなるか?

 病院や介護、身の回りの世話など、あなたにいちばん深く関わったAはこう思います。

「おやじ(おふくろ)のことをいちばん面倒見たのは自分なのに、どうしてBやCと同じだけしかもらえないんだ?」

 また、Bはこう感じるかもしれません。

「Aは三浪してやっと大学に入って、社会人になったら今度はサラ金の返済を親に助けてもらったのに……。親にいちばんお金を使わせたのはAじゃないか。そんなAが、どうして自分やCと同額もらえるんだよ!」

 そもそも、子どもたちに均等に財産を分与したいのであれば、何の準備もする必要はないのです。何もしなくても、親が死んだら結局は銀行の知るところとなり、遺産分割協議をやらされ、子どもたちは、銀行が手数料を取った残りのお金を均等に受け取るだけの話です。特定の子ども(A)が一人だけ多大なる老後の支援をしてくれていたとしたら、その子どもは大いに不愉快な気分になるでしょうが、「そんなの、別に関係ないね。子どもたちには均等に渡すのが一番」という考えであれば、遺言など書く必要はないし、それに代わる備えをする必要もありません。