「韓国での学暴(学生暴力)委処分は、1号から9号まであり、暴力の内容によってその等級が決まります。たとえば1号なら被害生徒への書面による謝罪、4号なら社会奉仕、6号で登校停止。最も重い9号になると退学処分となります。同じく厳罰化が進むフランスでは、学校のいじめを『犯罪』とする法律が新たに施行されたばかり。いじめによって被害者が8日間以上登校できなかった場合は加害者に最大5年の禁錮刑、または罰金が求められます。さらに、被害者が自殺または自殺未遂をしてしまった場合、加害者には最大で10年の禁錮刑が科される可能性もあります」
スコットランドやイギリスも、フランス同様にいじめが多い国だが、いじめに関する法律を定め、加害者に厳しい処分を下しているという。諸外国に共通するのは、「いじめた側に問題がある」として加害者に転校やカウンセリングを勧め、処分を下している点だ。一方、日本ではいじめ被害者が転校を余儀なくされるなど、被害者の立場がいまだに弱い印象がある。
「最近では旭川のいじめ自殺で、『加害者にも未来がある』と教頭が発言したと報道され、批判されていましたよね。日本では『ムラ社会になじめないほうにも問題がある』という意識がまだ残っていて、いじめが起きると被害者の立場がどうしても弱くなってしまうんです」
実際に教育現場では、いじめ加害者に厳しい処分を下すことを反対する教師も多いという。一体なぜなのか。
「なぜ加害者を守るのか不思議だと思うのですが、いじめというのは境界線が曖昧で、認定が難しい。間違った判断をしてはいけないというリスク回避の側面もあるのだと思います。現場の話を聞いていると、クラスでいじめがあると担任の指導力が悪いと評価が下がったり、問題のないクラスの担任は能力が高いと評価されたり、上辺だけの評価基準が日本の教育現場の事なかれ主義を加速させているのではないかと感じます。なかには問題が表面化しないようにしていて、『傍から見れば平和だけど実は陰湿ないじめだらけ』というケースもあります」
いじめに対する教師の感度の鈍さ、教育現場の事なかれ主義や表面的な評価がいじめの深刻化を招いているのだ。