世の中のさまざまなしがらみから抜け出して「幸せな人生」を歩むために必要なものはなんだろう?
それは、「自信」だ。『幸せな自信の育て方 フランスの高校生が熱狂する「自分を好きになる」授業』(シャルル・ぺパン著、児島修訳)では、フランスの高校生から大絶賛される哲学教師が、「本当の自信の育て方」を教えてくれる。本書からその一部を特別に紹介しよう。
人は常に「変化」している
哲学の専門用語を使えば、私は行動によって自信を高めることを、「本質主義」ではなく「実存主義」の視点でとらえることを提案している。
本質主義者にとって、自信を持つことは、自分の奥深くにある本質的な核のようなもの、不変的な「自己」を信じることを意味する。
このような考えは、YouTubeに投稿されている「自信」をテーマにした無数の動画で見ることができるが、そこには問題がある。
なぜなら、このような不変的な「自己」が存在することも、本質的で固定的な核としての「存在」が私たちの中にあることも、何も証明されていないからだ。
フロイト派精神分析学や現代哲学、神経科学、ポジティブ心理学などのさまざまな学問分野が同意するポイントがあるとすれば、それは「人のアイデンティティは1つではなく、絶えず変化している」ということだ。
この事実は、自信のなさに悩む人たちを安心させてくれる。そう、固定的で不変的な「私」など存在しない。人は常に変化しているのだ。
「あること」と「なること」
人は、幼少期に体験したトラウマをきっかけにして自信を失っていることが多い。そのときに役立つのが、哲学の「あること」と「なること」の区別だ。
私たちは「ある」のではなく、常に何かに「なる」過程にある。そう考えれば、自分に自信がなくても問題はない。
「自分は何かになれる」ことに自信を持てばいい。自信を、本質的で不変的な「自己」に対する信頼と見ることは、人生の美しさを逃してしまう危険をはらんでいる。
人生の価値
人生が魅力的なのは、もともと自分に備わっている能力が自ずと開示されていくからではない。人生は、挫折から立ち直って新たな道を歩み始めたり、自分の中に思いがけない可能性を発見したりする機会を私たちに与えてくれるからこそ、価値があり、人は自由に生きられるのだ。
もし人生が単に、あらかじめ定められた自分を生きることで成り立っているのなら、本質は存在に先立つことになる。だがサルトルの有名な言葉にあるように、「実存は本質に先行する」。つまり、人間にとって、不変的な本質よりも、個人として存在することのほうが重要だという意味だ。
サルトルは、人間の本質は、もう自分の人生に何も加えることができなくなる死に際して、初めて明らかになると考えた。そう、私たちの自信は、仮説としての本質ではなく、今を生きる存在の中にこそある。
[本記事は『幸せな自信の育て方』(シャルル・ぺパン著、児島修訳)を抜粋、編集して掲載しています]
『幸せな自信の育て方』は以下に当てはまる人におすすめの1冊です。ぜひチェックしてみてくださいね。
●「自己肯定感」が低い人
●いつも漠然とした「不安」を感じている人
●自分で「決断」するのが苦手な人