カーボンニュートラル達成のために
建築・不動産業界が取り組むべきこと
では、まず2030年を目標とする“野心的な気候変動対策”による温室効果ガスの大幅削減、および2050年までに温室効果ガスの排出量と削減量が拮抗するカーボンニュートラルの実現に向けて、国内の建築業・不動産業ができることは何か。
日本のエネルギー消費量の30%、木材需要の40%を占める建築・不動産分野については、当然のことながら大規模かつ徹底的な対策が求められることになる。
この命題に関して国が施策として打ち出したのは、建築物の省エネ性能の一層の向上、CO2貯蔵に寄与する建築物における木材の利用促進、既存建築ストックの長寿命化の3点におおむね集約される。
建築物の省エネ性能の一層の向上については、
(1)2025年度以降に新築される住宅を含む、原則全ての建築物に省エネ基準適合の義務付け
(2)省エネ性能向上の促進を誘導すべき基準をZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)基準へ引き上げること
(3)住宅性能表示制度の省エネ基準を上回る、新たな多段階等級の設定――など6項目
併せて、既存建築物についても、
(4)増改築部分のみ省エネ基準への適合を求める合理的な規制の実施
(5)部分的・効率的な省エネ改修、耐震改修と合わせた省エネ改修や建て替えの促進――など4項目
さらに、建築物における再生可能エネルギーの利用促進についても、
(6)地域の実情に応じた再生可能エネルギーの利用促進を図るための制度の導入
(7)ZEH・ZEB等に対する関係省庁連携による支援、ZEH等の住宅の融資・税制面での支援
CO2貯蔵に寄与する建築物における木材の利用促進については、
(1)高さ16m以下/3階建ての建築物の構造計算合理化、建築士の業務区分の見直し
(2)構造計算が必要となる木造建築物の面積規模を300平方メートルに引き下げ
(3)防火上区画した部分への防火規定の適用を除外し、木造化を可能とする――など9項目
既存建築ストックの長寿命化については、
(1)既存不適格物件に対する防火避難規定・集団規定の既存部分への遡及適用の合理化
(2)連担建築物設計制度等の対象に大規模の修繕・大規模の模様替えを追加――など4項目
などが施策として掲げられている。
実際に上記の施策を推進するためには、住宅の安全確保や、用途変更時の柔軟かつ容易な手続き方法、住宅への木材利用について主要構造部以外の構造基準や内装制限などの規制緩和なども検討しなければならないから、ハードルは決して低くないのだが、これらを成し遂げて温室効果ガスを削減しなければ、将来の世代により安全な地球環境・生活環境を残していく上で大きな禍根を残すことになる。