脳梗塞や心筋梗塞など
命を落とす危険性も

「たかが口臭」「たかが虫歯」と軽視して見過ごしたままでいると、重大な疾患につながりかねない。

「歯周病菌が体のあちこちに回って血管などを詰まらせれば、病気を発症させる恐れは十分考えられます。脳なら脳梗塞、心臓なら心筋梗塞、肺なら誤嚥性肺炎などです。妊婦の場合、早産や低体重児出産の恐れもありますし、インシュリンのパフォーマンスが低下するので糖尿病も悪化するでしょう」

 さらに、新型コロナウイルスが重症化するかどうかにも、口内の雑菌の量が大きく関わっているという。

「鼻風邪や喉風邪のような軽症で終わるのか、肺炎にまで発展してしまうのかについても、口の中の雑菌の量が関係しています。口内を清潔にしておけば、新型コロナの重症化リスクも下げられるのです」

 口臭の原因が別の病気の引き金になることもあれば、逆に「口臭がなんらかの病気の症状であるケースも考えられます」と小林氏は指摘する。

「胃腸疾患や糖尿病により、口臭が強くなる人もいます。歯周病と同じ病的な口臭ですが、歯周病の口臭は硫黄のようなニオイがするのに対し、胃の不調による口臭はツンとしたニオイがします。舌には『舌苔(ぜったい)』という白い苔のようなものが薄く全体に付着しているのが正常ですが、舌苔が分厚く付着している場合は、胃の状態が悪いときが多いです」

 舌は健康のバロメーターとしてかなり有用だ。舌苔がまだらに付着していたり、反対に少しも舌苔がなかったりする場合は「鉄欠乏性貧血」の可能性があるという。ほかにも、舌に黒や茶色の変色が見られる場合は、抗生物質の服用で体内の菌のバランスが乱れている可能性があるため、抗生物質の見直しが必要だ。

「喫煙者などは、歯ブラシや舌ブラシで舌をこすったときに白いかすのような汚れが取れることもあります。セルフケアで取れるような汚れは口臭の原因です。ただ、舌磨きは丁寧にやらないと傷がついて味覚障害になることも。1日1回、歯の根元から先端にかけて優しい力で10回ほどブラッシングしてください。専用の舌ブラシを用意せずとも、普段使っている歯ブラシで大丈夫です」