初代プレイステーションPhoto:So-CoAddict/gettyimages

プレイステーションの父と呼ばれる久夛良木健氏は、世界のギークからビジョナリー(未来を予見できる人)と呼ばれ続けている。そんな久夛良木氏が今年、近畿大学情報学部長に就任。若い世代にイノベーションの最先端を手ほどきする特別講義が、ビジネスパーソンにも非常に役に立つ内容だ。今回はプレイステーションが成功した理由をつまびらかにする。

プレステはなぜ成功したのか
久多良木氏が理由を語る

「プレステ級の巨大ビジネス」はどうすれば創れる?生みの親・久夛良木氏が指南くたらぎ・けん/近畿大学情報学部長。アセントロボティクスCEO。1950年東京生まれ。75年にソニー入社、情報処理研究所などを経て93年にソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)を設立。94年に初代プレイステーションを発表、99年SCE代表取締役社長。ソニー本体でも副社長兼COOを務めた後、07年に退任。近畿大学以外では電気通信大学特別客員教授、東京理科大学大学院上席特任教授などとして大学生に教えてきた。 写真提供=近畿大学情報学部

 新しいビジネスを立ち上げるにはどうすればいいのか。しかもそのビジネスが既存事業の延長線としてではなく、これまで存在すらしなかったドメイン(領域)そのものを新規に開拓し、そこに新たなイノベーションを呼び込むには何が求められたのか。このヒントとなる視点のいくつかを、ゲーム産業を事例にお話ししたいと思います。

 ゲームは今や、巨大な産業の一角を担うまでに成長しています。直近の世界市場の規模は約27兆円。映画や音楽、テレビの市場規模を上回り、エンターテインメントセクターでは最大となりました。現在も新たな成長フェーズに向け、産業全体が拡大しています。

 家庭用ゲーム機が世界で初めて発売されてからちょうど半世紀余りがたちましたが、この歴史は音楽や映画といった既に確立したエンターテインメントセクターと比べると、圧倒的に短い期間での躍進といえます。ゲームはその登場からわずか50年余りで、遥かに歴史が長い主要なエンターテインメント・ドメインを市場規模で追い越してしまったわけです。

 この流れの中で、プレイステーションは主要な役割を担ってきました。その中の取り組みや未来の創造に向けてのチャレンジを、いくつかの例を元にご紹介したいと思います。

 まずは絶妙なライバルの存在が、それぞれの成長ステージにおいてポイントになったということです。