古風な業界だからこそ
イノベーションの余地

 ただ、そのような変化やイノベーションを起こすには、どんどん若い世代に業界入りしてもらわなければならない。古風なイメージも強い和菓子業界だが、「若い世代にとってさまざまな挑戦ができる環境」(佐藤氏)だという。

「食品ビジネスがうまく進むには、イノベーションとマーケティングという両輪が十分機能することが必要ですが、和菓子業界はまだまだできる。特に零細企業のデジタル化はこれからの課題。このような環境であるため、イノベーションを起こせる余地や新たなビジネスモデル、サービスを試せる場が大いにあると思います。和菓子はヘルシーで、しかも芸術性を兼ね備えた食文化として海外でも人気があるので、海外展開も狙えますしね。ネットを活用したDtoC(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)のビジネスも工夫次第です。今までは身内が事業を引き継ぐケースが一般的でしたが、第三者に継いでもらう『継業』も業界を挙げて積極的に受け入れることが必要でしょう」

 海外進出の成功例としては「宗家源吉兆庵」(本社・東京都中央区)が挙げられるだろう。同社は現在、アメリカ、シンガポール、台湾、香港などで20店舗以上を展開中だ。

 また、佐藤氏によれば健康志向が高まっている現代こそ、和菓子離れを食い止めるチャンスだという。

「和菓子に使用される小豆には食物繊維、植物性タンパク質、ポリフェノールなどの栄養が豊富に含まれています。さらに洋菓子に比べ、和菓子は脂質も少ないので、ダイエット中でも食べやすい。エネルギーに素早く変わる糖質も摂取でき、かつ低脂質ということでアスリートの補食にも和菓子は用いられるほどです。さらに和菓子は、ベジタリアン、ヴィーガン、グルテンフリーなどのニーズにも応えることができる。このような面でのメリットを打ち出し、個々のお客さんのニーズに合うような商品開発、マーケティングも需要拡大の一手であると思います」

 和菓子業界から驚くようなイノベーションが生まれることを期待したい。