「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。

【91歳の医師が教える】えっ、この程度でいいの?よく噛んで脳の血流を増やす“意外な食べ物”Photo: Adobe Stock

「認知症を予防する」という栄養素があるけれど

【前回】からの続き 食べることで認知症を予防するというと、カレーの香辛料「ターメリック」がいいとか、青魚に含まれる「エイコサペンタエン酸」(EPA)がいいといった栄養素の話になりがちです。しかし、私はこうした特定の栄養素で認知症を防ぐというアプローチには、あまり賛成できません。

仮に、認知症によいとされる栄養素を含む食品が見つかったとしても、それを継続的にとってこそ効果を発揮できるというもの。ときどき思い出したように食べるだけでは、期待したような成果は得られないでしょう。

そもそも、いくら認知症によいとしても、同じ食品をずっと食べ続けることが果たしてできるでしょうか? どんな好物だって、毎日食べるのはイヤですよね。たまに食べるから、「ああ美味しい」と思うものです。ましてや、たいして美味しいと思わない食べ物が、認知症によいとわかったとしても、それをずっと食べ続けることができるでしょうか? 少なくとも、私にはできません。

歯応えのある食べ物を選んで脳の血流を増やす

それに、もし本当に認知症に効く栄養素があるとしたら、それは治療薬として早々に認可されて、病院で処方されるようになっているはずです。治療薬になっていないということは、その程度の効き目しかないという証あかしともいえるでしょう。

食べることは、人生最大の楽しみともいえます。それなのに、治療薬のように効くわけでもない食べ物をイヤイヤ食べ続ける必要はあるでしょうか。それよりも、好きなものをよく嚙んで食べる習慣を身につけたほうが、よほど効果的です。

では、脳の血流促進に効果がありそうな嚙み応えのある食品とは、一体どんなものなのか? そしゃく回数が1日4000回近かった弥生人は、栗やクルミなどのナッツ類、玄米、山菜などを栄養源にしていたようです。よく嚙まないと消化できなかったので、必要に迫られて、そしゃくしていたのでしょう。

かまぼこと同じくらいの硬さのものを嚙む

嚙み応えがあるといっても、歯が丈夫でない高齢者には、ナッツ類のような硬い食べ物は手強そうですし、無理して硬いものを嚙もうとすると、歯が欠けてしまう恐れもあります。さらに、硬いものを無理して嚙んでいると、血圧が上昇する恐れもあります。

これに関しては面白い研究があります。かまぼこを嚙むと、脳に血液を送る「総頸動脈」の血流量が増えたというのです(出典:「かまぼこ咀嚼時の血圧、心拍出量および脳血流量の変化」[國學院大學栃木短期大学 石山育朗教授])。

かまぼこくらいの硬さなら、好物にもたくさん見つかりそうですし、高齢者でも抵抗なくそしゃくできるはずです(嚥下[えんげ]機能が低下していて、誤嚥[ごえん]の恐れがある場合には、介護者などが注意する必要があります)。

※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。本書には、脳が若返るメソッドがたくさん掲載されています。ぜひチェックしてみてください!