「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。
認知症予防は“脳の血流促進”がカギ
なにかの拍子に頭の回転が悪くなる場面があると、口の悪い友達あたりから「血の巡りが悪くなったんじゃないの?」などと、からかわれることがあります。実は、この“血の巡り”こそが、認知症予防の大きなカギとなります。
絶対的な切り札とは呼べないとしても、「血の巡り=血流を促進すること」をおろそかにしていたら、認知症予防は始まらないのです。
私たちの身体は、およそ37兆個もの細胞からできているといわれます。その細胞は、血液が巡って運んできてくれる新鮮な「酸素」と「栄養素」があってこそ生き続けています。ガソリンがなければ、高級車のロールス・ロイスだってスポーツカーのフェラーリだって1ミリも走れないのと同じ理屈です。
脳の血流が大事なワケ
細胞は、血流がしばらく途絶えると「壊死(えし)」、つまり死んでしまいます。それは、認知症を発症する脳でも同じことなのです。
脳をつくっているのは、「ニューロン」(神経細胞)です。脳全体で、およそ860億個もの神経細胞が働いています。この神経細胞は、脳内に血液が潤沢に流れているからこそ、機能できます。
脳の神経細胞は、わずか20秒の酸欠で参ってしまうといわれているのです。
脳はたくさんの血流を欲している
認知症は脳の機能が衰える病気です。それを防ぐ第一歩は、脳の神経細胞に血液とともに、新鮮な酸素と栄養素を送り込むように努めることだと、まずは覚えておきましょう。
脳は体重の2%ほどの重さしかないといわれています。体重65kgの人なら、脳の重さは1.3kg前後という計算になります。そんなに軽く小さいのに、体内を巡っている血液の14~15%が循環しているといわれます。それくらいたくさんの血液が巡らないと、脳は働かないということです。
なにしろ、安静時の消費カロリーの約20%を脳が占めている、といわれるほどなのです。運動をすると筋肉と皮膚に血液が一気に集まりますが、それでも脳の血液量は、ほぼ安静時と同じくらいに保たれます。それほど生命活動において、脳の血流が大事なのです。
「昼食後に眠たくなる」本当の理由
「昼食後に眠たくなるのは、消化吸収のために胃腸に血液が集まり、脳の血流量が減るから」などと俗にいわれますが、食事をしたくらいで脳の血流量は減ったりしません。
昼食後に眠くなるのは、活動と休憩のリズムを刻む脳の「体内時計」の働きにより、その時間帯に眠気が高まるように設定されているからなのです。太陽が高くのぼり紫外線も強まる時間帯は、木陰でまどろみ、ひと息入れなさいということなのかもしれません。
脳の血流が不足すると
認知機能が障害される
脳の血流が減ると、神経細胞の働きが不十分になり、認知機能の低下が起こります。マウスを使った実験で、慢性的で軽度な脳の血流量の低下が続くと、有害な活性酸素が生じて脳内の炎症などが進み、認知機能が障害されることが明らかになっています(出典:京都大学大学院薬学研究科の白川久志准教授らの研究グループ)。
これはアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症の発症にも共通しているそうです。
※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。本書には、脳が若返るメソッドがたくさん掲載されています。ぜひチェックしてみてください!