「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。

【91歳の医師が教える】<br />モノを置いた場所を忘れてしまった…<br />「まだ大丈夫」なんて油断大敵!<br />早めの対策で「認知症」への進行を<br />確実に食い止めようPhoto: Adobe Stock

軽度認知障害の4つの違いとは?

【前回】からの続き 軽度認知障害(MCI)は、現在では次の4つに分類されています。

健忘型MCI単一領域障害
健忘型MCI多重領域障害
非健忘型MCI単一領域障害
非健忘型MCI多重領域障害

軽度認知障害は、まず①と②の「健忘型」か③と④の「非健忘型」かに分けられます。

何度も同じことをいったり尋ねたり、大事な約束をすっぽかしたりするなど、記憶障害が見られるのが、健忘型です。一方、目立った記憶障害はないものの、言語障害や、段どりよく作業がこなせない(実行機能障害)といった他の認知機能の障害が見られるのが、非健忘型です。

【91歳の医師が教える】<br />モノを置いた場所を忘れてしまった…<br />「まだ大丈夫」なんて油断大敵!<br />早めの対策で「認知症」への進行を<br />確実に食い止めよう

早めの対策で「正常認知機能」へのカムバックが可能に

さらに軽度認知障害は、「単一領域障害」「多重領域障害」かに分かれます。障害が1つの領域にとどまっているのが単一領域障害で、2つ以上の領域に広がっているのが多重領域障害です。

シンプルにとらえるなら、単一領域障害のほうが脳のダメージを受けている部分が狭くて軽症、多重領域障害は脳のダメージを受けている部分が広範囲に及び、症状が進んでいて重症ということです。

国立長寿医療研究センターのグループが、大阪府在住の高齢者4153人を4年間追跡した研究によると、当初、軽度認知障害と診断された人のうち、これら4つのカテゴリーである程度、正常認知機能へ復帰できた割合には、次のような差があることがわかりました(Shimada H, et al.,J Am Med Dir Assoc 2017 Jul12)。

【正常認知機能へ復帰した割合】
非健忘型MCI単一領域障害 → 57.0%
健忘型MCI単一領域障害 → 38.7%
健忘型MCI多重領域障害 → 25.7%
非健忘型MCI多重領域障害 → 20.9%
【91歳の医師が教える】<br />モノを置いた場所を忘れてしまった…<br />「まだ大丈夫」なんて油断大敵!<br />早めの対策で「認知症」への進行を<br />確実に食い止めよう

このデータからわかるように、健忘型でも非健忘型でも、軽度認知障害は軽症(単一領域障害)のうちから早めに対策を始めたほうが、認知症への移行をより確実に食い止められて、正常認知機能へのカムバックが果たせるのです。

【次回へ続く】 ※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。本書には、脳が若返るメソッドがたくさん掲載されています。ぜひチェックしてみてください!