1946年から「国体」の愛称で根付いてきた「国民体育大会」が、2024年から「国民スポーツ大会」(国スポ)へと名称を変える。東京オリンピック・パラリンピックの開催を契機として、スポーツの価値を世界の人々と分かち合い、世界各国と協調していくことを期待し、スポーツ基本法が一部改正されたことに伴って、大会名称が変更となった。
日本では長く続いた“体育”の文化があるが、上意下達のそれは“スポーツ”文化が醸成された海外ではスタンダードではない。スポーツの語源は、ラテン語の“deportare”。日々の生活から離れること、つまり気晴らしをする、休養する、楽しむ、遊ぶなどを意味する。体育からスポーツに変わる今、スポーツをする・観る・支える、すべての人に「スポーツのチカラ」を届けられるよう準備しているのが、2024年の開催県である佐賀県だ。新しい大会がどのように開催されるのか、佐賀県知事・山口祥義氏に聞いた。(取材・文・撮影/編集者・メディアプロデューサー 上沼祐樹)
「国民体育大会」の名称を変更
スポーツの本質的な価値は“挑戦”
国体はこれまで、「体育大会」として80年近く歴史を刻んでおり(第1回大会は昭和21年)、スポーツ界をはじめ多方面で貢献してきました。始まったのは戦後間もない時期で、この国が復興していくうえで、「心技体」が整った人材をつくることが重要でした。そのため、皆が同じように体を鍛え、共通したルールに従うことは大切な観点であり、「体育」が教育の世界から始まった点は、私も理解できます。
一方で、伝統が強調されたため、固定化された側面もあります。全員が一糸乱れない行進を行うのは、「体育」の側面では良いかもしれませんが、「スポーツ」ではもっと自由でいいのではないでしょうか。時代が令和に変わり、国際的なつながりは深まり、多様性の大切さに目を向けるようになりました。今こそ「体育」を「スポーツ」へと変えていくべきだと考えています。
その中で、たとえば2024年の国民スポーツ大会では、開会式の行進は行わず、選手それぞれの楽しみ方を尊重しようと考えています。オリンピックをイメージするとわかりやすいかもしれません。スポーツとはそもそも、選手が自身の競技に“挑戦”するもの。だからこそ、私たちも初めてのスポーツ大会に向けて、選手と同様に“挑戦”する姿勢で取り組んでいます。
他にも、これまでデイゲームだけの開催だったところを、バスケットボールでナイトゲームを導入したり、正式競技全てを動画配信したり、より多くの人がスポーツを楽しめる環境づくりを進めています。