平たくいえば、新しいCEOはマイクロソフトをゼロから作り替えようとしている、ということだと私は受け止めた。

 そしてこれが、本当にそうだったのである。

 ITの世界では、グーグルやフェイスブックなど新興企業が市場を席巻していった。アップルのように復活を遂げた企業もある。そうした一連の企業群に比べれば、マイクロソフトは「Windows」や「Office」など当たり前のツールを作る、一昔前のオールドカンパニーというイメージを持たざるを得なくなっていた。多くの人にとって、そうだったのではないか――。

 ところが、従業員12万人を擁す、売上高10兆円を誇る、そんな世界最大のソフトウェア会社が変貌を遂げようとしていたのである。私は俄然、興味を持った。

 実際、ソフトウェアからクラウドへ、というビジネスの大転換が行われていた。そもそも自分たちの存在理由は何かを改めて問い直し、会社の屋台骨を支えていたライセンスビジネスから、まったく違う収益構造へと大胆にも変貌させようとしていたのだ。売上高10兆円規模の会社が、である。実際、それが着々と進行していた。

 マイクロソフトといえば、私のような中高年世代はWindows 95ブームも相まって、世界中にパソコンを売りまくる巨大帝国というイメージが強かったと思う。ところが、会社のカルチャーも大きく変わっていた。日本法人でも働き方改革がいち早く大胆に行われ、スタイリッシュなオフィスには女性の姿も数多く見られた。私がかつてイメージしていたマイクロソフトとは、ずいぶん変わっていたのだ。