トヨタPhoto:PIXTA

ダイヤモンド・プレミアム(有料会員)ならダイヤモンド社のベストセラーが電子ブックでお読みになれます!月ごとに厳選して提供されるダイヤモンド社の話題の書籍から、ここでは一部を抜粋して無料記事としてお届けします。全体をお読みになりたい方はぜひダイヤモンド・プレミアム(有料会員)にご登録ください!今回は2022年10月提供開始の『トヨタの話し合い』。日々、進化し成長する企業の「聞き方・話し方」のノウハウとは。

はじめに

トヨタの話し合い『トヨタの話し合い』
加藤裕治 著
定価1650円

「トヨタに学べ!」
「カイゼン、トヨタ生産方式だ」

 バブルが崩壊し、日本経済が停滞した頃、その中でも着実に日本一の利益を上げ、世界一に向かって邁進(まいしん)するトヨタを見倣(みなら)って、トヨタ生産方式(TPS)を取り入れようとする企業が次々と現れた。トヨタ生産方式に関する本もたくさん出版された。

 しかし、それによって企業の業績が反転向上した成功談は必ずしも多くない。なぜか。

 それは、TPSが企業業績を改善する特効薬ではなく(たぶん漢方薬のようなものだろう)、また、ジャスト・イン・タイムやカンバン方式を真似ても、それだけでTPSが実践できるわけではないからである。

 TPSによる経営を成功に導くには、社員一人ひとりの価値観にまで踏み込んで「カイゼン」という魂を入れなければ、まさに「仏つくって魂を入れず」になってしまう。そして、それを飽くことなく無限に実践しなければ、企業業績の向上に結びつくことはない。

 トヨタでは、このTPSの魂の部分を社員に浸透させるために、労働組合が大きな役割を果たしてきたと私は考えている。カイゼンを本物にするには「徹底して考える」、そして「徹底して話し合う」ことが必須である。

 トヨタ労組では、組合員一人ひとりが「徹底して考えること」と「徹底して話し合うこと」を活動の基本に置き、繰り返し実践してきた。それが、労働条件を長期安定的に向上させる最も有効な道だったからである。トヨタの社員は組合員として組合活動に関わることで、カイゼンという方法論により深く馴染(なじ)んでいくのである。