製造数は20分の1に激減
利益もほとんどナシ

 ベーゴマの歴史は古い。一説では、平安時代のバイ貝遊び(バイゴマ)が起源ともいわれている。その後も昭和の高度経済成長期にかけて、長らく子どもたちの間で遊ばれていた玩具のひとつだった。しかし、時代の流れとともにその人気は陰りを見せ、近年はコロナの影響もあって需要の減少が著しい。

「最盛期である約50年前の我が社のベーゴマ製造数は、年間で約200万個でしたが、3年前の時点で約20万個に減少。その後、コロナの影響で一時は開店休業状態に追い込まれて、約10万個にまで落ちました。最近になって、ようやく少しずつ持ち直してきたところです。ただ、そもそもの話でいえばベーゴマは採算性が悪く、もうけもほとんどない。正直なところ、いま会社がある場所にマンションでも建てたほうが、よっぽどもうかるでしょうね」

 同社のベーゴマの販売価格はサイズによって異なり、小が215円、中が265円、大が315円。昨今の原材料価格の高騰に伴い、近々値上げを検討中とのことだが、いずれにせよ二束三文と言わざるをえない。

 それでいて、ベーゴマ作りは熟練の技術を必要とする。その工程は「まず砂を圧縮機械で固めて型を作り、その中に溶かした鉄を流し込む。鉄が固まったら砂型から取り出し、しっかり磨いて製品にする」という流れだが、特に難しい点は三つある。

「一つ目に砂型を作るために使う“砂”の調合。溶かした鉄を型に流す際、硬く粘り気のある土を使った砂型では模様がきれいに出ないし、軟らか過ぎても模様が飛ばされてしまう。さらに夏と冬では砂の湿度や温度なども変えなければなりません。二つ目に砂型の“ズレ”の調整。ベーゴマは上部と下部の砂型を別々に作り、その後に重ね合わせる工程があります。このときに1ミリでもズレると、ベーゴマが全く回らなくなってしまうのです。三つ目に砂型に鉄を流し込む際の“流量”の加減。一気にドバーッと流せばあふれるし、チョロチョロと流しても途中で鉄が固まってしまう。そのため、スーッと細めに入れる技術が必要です」