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スマートフォンの理想と現実

昨年とは大きく違う「成熟と停滞」のCES2013
何かが大きく変わる直前の“嵐の前の静けさ”か
――ラスベガスCES会場から占う2013年【後編】

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第42回】 2013年1月25日
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中国の家電メーカー・ハイセンス(海信)のブースに展示されたGoogleTV Photo by Tatsuya Kurosaka 
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 もちろん、国家安全保障面での課題自体については、その真偽や実効性について、議論の余地が大いにある。よりリスクを明確に考えるのであれば、危ないのは中国ベンダーだけなのか、という問いも成立する。しかし消費者の第一印象が重要な意味を持つ最終市場では、やはり勢いがつきづらい状況にあるのだろう。

 ただ、これをもって中国勢の低迷と考えるのは、早計かもしれない。米国経済全体がいくら好調であるとはいえ、格差の拡大や低所得者層の増加は、米国社会で顕著である。実際、米国国勢調査局の2011年の調査結果によれば、世帯の総収入が2.3万ドル(約200万円)を下回る貧困層の割合が全人口の15%程度で、8割の世帯収入が減少傾向にある。

 おそらく高付加価値商品を必要とする実数はそう多くはなく、多くの需要は低価格商品で満たされるのが、米国市場の現実であろう。そうした市場では、日本勢はおろか、もはやプレミアムブランドと化した韓国勢でさえも、対応できない。逆にいえば、中国勢はCESでさほどアピールする必要もなく、いわば「黙っていても売れる」状況なのかもしれない。

スマートフォンは早くも成熟期へ

 近年のCESは、テレビ等のAV機器だけでなく、スマートフォンやタブレットなどの発表の機会としても注目を集めている。実際、昨年はノキアが大々的に発表を行ったし、今年もファーウェイがWindowsPhoneの新製品を発表したのは、前述の通り。

 しかし今年はスマートフォンやタブレットなどの発表は不調だった。これは私自身が会場を見て回り、プレスやアナリスト向けのカンファレンスを含め、あちこちで見聞きした上での、総合的な印象である。

Ubuntuが発表したスマートフォン向けプラットフォーム“Ubuntu for Phones” Photo by Tatsuya Kurosaka 

 まず、新しいパラダイムが、まったく打ち出されなくなった。昨年くらいまではWindowsPhoneが大々的に打ち出され、新たな勢力の台頭を予感させたが、今年はそれも一巡し、特に大きな話題が見当たらない格好だ。

 OSプラットフォーム周辺の話題としては、Linuxディストリビュータとして名の知れたUbuntuがスマートフォン向けに「Ubuntu for Phones」を発表し、軽快なデモを行ったことくらいだと思われる。ローエンド市場や法人市場開拓という観点で、個人的には興味深かったが、さすがにやや玄人向きだろう

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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