変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、6月29日発売)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)で、IGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏だ。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていく時代。これからは、組織に依存するのではなく、一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルにならざるを得ない。同書から抜粋してお届けしている本連載だが、今回から4回に分けて「仕事がはやい人と遅い人の決定的な違い」について解説していく。

「仕事がはやい人と遅い人」の決定的な違いとは?【第1回】Photo: Adobe Stock

仕事がはやい人と遅い人には、決定的な違いがある

 私はこれまでに多くの新人の採用や研修を担当してきました。その中で気付いたことは、大学を卒業したばかりの新卒でも仕事がはやい人もいれば、10年以上の経験があっても仕事が遅い人がいるということです。

 今回から4回に分けて、仕事がはやい人と遅い人の決定的な違いについて解説していきます。それらの違いは簡単に埋められることばかりなので、仕事のスピード改善に役立ててもらえたらと思います。

仕事のスピードを見極めるためのキラークエスチョン

 今回取り上げる1つ目の違いですが、仕事のスピードを見極めるために、次のような質問をしてみましょう。

今抱えているタスクをすべて書き出してください

 タスクを覚えていない、思い出せないというのは論外ですが、紙やホワイトボードにタスクを書き出してもらったら、それらの粒度(粒の大きさ)を見てみましょう。

 仕事が遅い人の特徴は、仕事を細かい単位に分解していないことです。例えば、「トヨタ自動車について調べる」「飲食業界の今後について調べる」「最終報告書を作成する」などです。

 逆に、仕事がはやい人のタスクは「トヨタ自動車について調べる」ではなく、「トヨタ自動車の沿革について調べる」「トヨタ自動車の過去5年の財務諸表をついて調べる」「トヨタ自動車の役員構成について調べる」……のように細かく分解されています。

仕事を細かい単位に分解していない人には、設計図がない

 細かく分解された個別のタスクは、仕事の設計図とも言えます。細かく分解せずに仕事に闇雲に取り組むのは、設計図がないまま思いつきで仕事を進めているのと同じです。

 上司の立場からすれば、粒度の細かいタスクリストがなければ、部下が正しく依頼事項を理解しているかどうかを判断することが難しくなります。そうなると、何らかの成果物が出てくるまで軌道修正をさせることができないので、上司にとっても部下にとっても、効率的な仕事の進め方ではないでしょう。

 仕事に取り掛かる前にタスクを細かく分解して、設計図に沿って効率的にタスクをこなせば、仕事のスピードは格段にアップします。両者を分けるのは、そのちょっとしたコツを知っているかどうかです。

アジャイル仕事術』では、タスクを分解するための具体的な方法以外にも、答えのない時代にすばやく成果を出すための技術をたくさん紹介しています。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。日本コカ・コーラを経て、創業期のリヴァンプ入社。アパレル企業、ファストフードチェーン、システム会社などへのハンズオン支援(事業計画立案・実行、M&A、資金調達など)に従事。その後、支援先のシステム会社にリヴァンプから転籍して代表取締役に就任。退任後、経営共創基盤(IGPI)に入社。
2013年にIGPIシンガポールを立ち上げるためシンガポールに拠点を移す。
現在は3拠点、8国籍のチームで日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。
IGPIグループを日本発のグローバルファームにすることが人生の目標。
細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。
超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。