ブランディングで、企業がもっと健康になる

いま、中小企業こそ取り組むべきデザイナーを巻き込んだ企業ブランディングNaoko Hirota
東京芸術大学卒業後、プロダクトデザイナーとして数多くの製品開発デザインを経て、デザイン経営視点で企業ブランディング、ビジネススキーム、プロダクトデザインを一貫した活動を行う。すみだ地域ブランド推進協議会理事兼クリエイティブディレクター、東京ビジネスデザインアワード審査委員長(2019~2020)、受賞歴:RED DOT DESIGN AWARD、IF Design賞、グッドデザイン賞他受賞多数。

 私が主宰するヒロタデザインスタジオでは、経営コンサルティングとデザインを地続きにした独自の手法で企業ブランディングをサポートしている。手順はこうだ。

 まず、対象企業の財務構造を把握することから着手し、そこで経営の骨格を確認する。そして、会社の歴史をひも解き、現在や未来にも通用する普遍性を見つけていく。さらに経営者と対話を重ね、10年後、20年後にどんな会社でありたいのか、その企業が実現したい幸せの定義とは何なのかを明らかにし、実現までのロードマップを描く――。こうした過程を通じて、その企業の在り方や将来像が定まってくる。

 さらに、業界の慣習や伝統的な手法を見直し、新しい収益構造を組み立てる。新たな顧客との接点づくりにつながる商品・サービスの施策を立て、それを踏まえて商品・サービスをデザインしていくこと。これらと並行して業務の効率化を進めたり、社員が望む働き方を整える工夫をしたりといったことも重要だ。

 この一連の流れを、私は企業ブランディングとしてお勧めしている。このように経営を総合的にデザインすれば、経営者の頭の中も整理され、将来にわたって経営にぶれがなくなる。単発の商品・サービス開発が、西洋医学のような対症療法だとすれば、企業ブランディングは東洋医学のような体質改善に近い。

 私は、企業とデザイナーのマッチングを目的としたコンペティション「東京ビジネスデザインアワード」で、長く審査委員長を務めてきた。このコンペティションで、デザイナーが企業と協業するに当たり、その企業の大筋をつかみ、施策をあぶり出すための手掛かりとして、活用したのが、内閣府が提供している「経営デザインシート」だ(図)。現在私が実践している企業ブランディングは、この手法を土台にしている。実際に協業が始まれば、その企業が抱える問題や課題をさらに詳細に掘り下げて議論を発展させていくのだが、何より重要なのは、最初からデザイナーがこうした企業情報を共有していることである。

いま、中小企業こそ取り組むべきデザイナーを巻き込んだ企業ブランディング