多くのビジネスパーソンから、「会議がうまく仕切れない」「無駄な会議だと言われる」「何度も似たような会議を繰り返してしまう」「結論が出ない」といった悩みを耳にする。しかし、「1ページ」のメモを事前に作り、その場で配布してうまく活用すれば、会議の進行は大きく変わる。何より、「1ページ」の力は、ミーティングをうまく仕切れなかった著者自身が、P&G、楽天、フェイスブック、MOON-Xと業界も会社も、自分の役割さえも変わっても、一貫して変わらず、実感し続けている。当連載では、『今すぐ結果が出る 1ページ思考』(長谷川晋)にまとめられている「1ページ」を活用した会議の進め方などを解説していきたい。
「No.1ブランド」に向けたテストプランの提案
ビジネスを成長させるためのミーティングで使う「1ページ」です。アシスタント・ブランドマネージャーとしてテストプランを提案する、という設定で「1ページ」を作ってみました。
現在、業界トップの競合ブランドに真っ向から勝負を挑んでナンバーワンシェアを獲得しよう、そのためのビジネスを加速させるテストプランを実施しよう、と事業の上層部に提案する社内ミーティング用の「1ページ」です。
タイトルは『「No.1ブランド」に向けたテストプランの提案』とストレートな表現にしています。
「1ページ」にはいくつか構成要素がありますが、言うまでもなく、タイトルは極めて重要です。何のための「1ページ」なのか、が端的に語られていないといけません。
「テストプラン」というだけでは何のテストかわからないので、「No.1ブランド」というキーワードを使って、パッと見てすぐに何を目指すための討議なのか、がわかるようにしています。果敢に挑戦していくことに対するワクワク感を伝えるという意図も込めたタイトルです。
冒頭に置いているのが、「目的」です。実は下にも「目的」があるのですが、冒頭にあるのは、「このミーティングの目的」。下にあるのは、「事業目的」であり、「ビジネスで目指すゴール」です。
もちろん最終的な目的は、後者の「ビジネス目的」になるわけですが、では、このミーティングでは何をどこまで決めるのか、このミーティングで何を達成したいのか。それをはっきりさせるために「このミーティングの目的」を置いています。
ミーティングそのものの目的と、プロジェクトの目的が、同じになるわけではありません。だから、あえて「ミーティングの目的」「ビジネス目的」と少し丁寧に書いています。そうすることで、両者の混乱を避けることができます。
そのあとにくる「ビジネス背景」は、今どういう状況にあるのか、なぜ今テストプランが必要なのか、書き記しています。
ビジネスは絶好調。前年同月比+20%超の成長という、ファクトを記しています。いい調子だ、このままガンガンいこう、というメッセージです。
一方で、まだまだ競合とはシェアの差があるということを忘れてはいけない。そこで、この差を埋めにいくためにはいろんな仕掛けをしていかなければ、強力なプランを実施しなければ、ということで、このミーティングにプランを持ってきた、というストーリーです。
まとまった文章にして書く方法もありますが、1行ずつ短くシンプルに書いたほうが、読み手には端的に伝わると私は考えています。行の頭には、「●」を置くようにしています。
「目的」の2つ目は「ビジネス目的」。先にも触れたように「事業目的」であり、「ビジネスで目指すゴール」です。もともとセットしていたナンバーワンのシェアを取るというビジョンを、1年前倒しで挑戦しようということをゴールに置きました。
このテストプランの「目的」は、そのゴールを達成するためであることを明記しています。言い換えれば、このテストプランがある場合とない場合の差分(第2章「551の蓬莱作戦」参照)は、このテストプランを実施することで、さらにビジネスを加速させる「勝ち筋」を年内に見つけ、それを来年実施することで目標を前倒しで達成することができるようになる、ということです。
「討議ポイント」については、このときは2つの項目を立てています。「プラン作成のベースとなる考え方(原理原則)」と「プランの選択肢と推奨案」です。
詳細のディスカッションに入る前に、どういう「原理原則」でプランを考えたのか、ということを書き記しています。
プランには、いろんな切り口、考え方があります。その中で、どのような考え方をベースにしたのか、共有することでメンバーは討議の根幹となる部分の目線合わせをすることができます。そして、この原理原則は先に記載した「ビジネス目的」とも一貫性を持っていることが重要です。
MOON-X Co-Founder/CEO
2歳から9歳までアメリカ、シアトルで育つ。京都大学経済学部卒、体育会ハンドボール部主将。2000年に東京海上火災入社、法人営業担当。P&Gで10年間、Pampers・Gillette・BRAUN・SK-IIなどのマーケティングおよびマネジメントを統括。その後、楽天の上級執行役員としてグローバルおよび国内グループ全体のマーケティングを管掌。2015年Facebook Japanの代表取締役に就任、在任中にInstagramの国内月間ユーザー数は810万から3300万に。2019年8月に「ブランドと人の発射台」をミッションに掲げるMOON-X Inc.を創業。現在、自社D2Cブランドを展開すると同時に、共創型M&Aや他社ブランドの支援も展開中。『今すぐ結果がでる 1ページ思考』(ダイヤモンド社)が初の著書。MOON-Xコーポレートサイト:https://www.moon-x.com/ Twitterでは次世代ビジネスリーダー向けに「#ビジネスの戦闘力」を高める情報を発信中:@ShinHasegawa8
何かを決めていくミーティングでは、「原理原則」を書いておくことは効果的です。アイディアがいろいろ出てきた場合、どういう基準で最終的に判断をすべきなのか、「原理原則」があれば、それに基づいて決めていくことができるからです。
「原理原則」がないと、議論があちこちに飛んでしまい、収拾がつかなくなってしまう危険があります。長時間のブレーンストーミングのような会議なら別ですが、短時間で密度の濃いミーティングを行いたいときには、「原理原則」をあらかじめ決めて、「1ページ」に書き記しておくことをオススメします。
具体的な打ち手の提案内容は、「プランの選択肢と推奨案」として表にしています。表やチャートは、何より一覧性を高めるので、私はよく活用します。
テストプランとして、メディア量の大幅アップ、大規模サンプリングの実施、新広告キャンペーンの展開、という3つのプランを提示して、それぞれの詳細を「WHO、WHAT、HOW」のフレームワークを使って説明しつつ、どのくらいのコストがかかるのか、を書き記しています。
これを見ながら、ディスカッションをしていきますが、討議にあたり考えるべきキーポイントを表の下に加えています。もちろん「チームとして何がやりたいのか」という意志とその理由も、この中に入れています。これがあったほうが、討議が建設的に進むと考えたからです。
最後は「ネクストステップ」です。やらなければいけないスケジュール感を書き記しています。
これは、ビジネスを加速させるためのテストプランを事業の上層部に提案するミーティングで使う「1ページ」です。どう提案すれば説得力をもって受け入れてもらえるか、それをどう進めていくか、やはり十分に考えて準備をする必要があります。
どんな「背景」があり、何が「目的」で、具体的なプランの選択肢はどんなもので、何を「討議」し、どのような「ネクストステップ」で前に進めるべきかを提示する。「1ページ」にすることで、すべてを過不足なくカバーできるのです。
※当記事は、『今すぐ結果が出る 1ページ思考』より一部を抜粋・編集したものです。