変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、6月29日発売)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)で、IGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏だ。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていく時代。これからは、組織に依存するのではなく、一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルにならざるを得ない。同書から抜粋してお届けしている本連載の特別編。「結果が出せない平成上司」と「結果を出し続ける令和上司」の決定的な違いとは?の第2回をお届けする。

「結果が出せない平成上司」と「結果を出し続ける令和上司」の決定的な違いとは?【第2回】Photo: Adobe Stock

拡大再生産の時代は終わった

 平成の中期までは拡大再生産の時代でした。品質の良い物を量産し、利益を設備投資に回して拡大することで多くの日本企業が世界進出を果たしました。

 しかし、グローバル化とデジタル化によって多くの産業の構造が変わり、拡大再生産の時代は終わりつつあります。

 大規模なサプライチェーンを構築しなくても電気自動車を製造できるようになり、今や中国には300社ほどの電気自動車メーカーが存在していると言われています。東南アジアなどの新興国でも電気自動車メーカーが多数出現しています。

 デジタルコンテンツの配信も容易になり、個人でも動画を制作してユーチューブなどのプラットフォームを介して世界に発信することが可能になりました。かつてのように、大手テレビ局などが番組を制作して、配信する必要はありません。

かつてはメンバーシップ型やジョブ型が機能した

 人材が不足していた拡大再生産の時代には、自社で優秀な人材を独自に採用・育成し、長期間雇用することが有効でした。従業員を個別の企業に囲い込むための雇用はメンバーシップ型と言われています。

 一方、職種別採用が一般的な欧米企業では、組織がモジュール化されていて、各ポジションの役割も明確に定義されています。マニュアルなども整備されているため、専門性のある社員が入社後すぐに成果を出せるように設計されています。このような企業ではジョブ型の雇用形態が有効です。

 しかし、いずれの雇用形態も、ゴールがクリアで、企業の活動内容を明確に定義できることが前提となっています。ゴールが明確でないときには、企業の活動内容や各従業員の業務内容を明確に定義することができないため、メンバーシップ型もジョブ型も機能しません

これからの時代はHowよりもWhoが重要

 ゴールが明確だった平成の時代には、企業の方向性を決めたら上の人間が「How」を定義することが重要でした。「How」に合わせて採用・育成していけば、自ずと事業を拡大することが可能でした。

 しかし、今のこの変化の激しい時代に令和上司自らが「How」を考えていたのでは、時代に取り残されてしまいます。

 それよりも、方向性を実現するために最適な「Who」を考えましょう。自社に閉じて考える必要はなく、世界中の企業や個人の中から「Who」を探すことで、新しい価値を生み出せるようになります

アジャイル仕事術』では、多様なチームを組成する方法以外にも、働き方のバージョンアップをするための技術をたくさん紹介しています。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。