写真:TwitterとYouTubeのロゴディスプレイに表示されたTwitterとYouTubeのロゴ Photo:SOPA Images/gettyimages

イーロン・マスク氏による米ツイッターの買収において、表現の自由と規制を巡る論争が交わされた。その主要な論点の一つが、プラットフォームはフェイクニュースや陰謀論などの悪質情報の拡散とどう向き合うべきか、というものだった。そこで注目したいのが米国の研究機関によるある報告書だ。その中で警告の対象となったのは、SNSの「Twitter」と動画共有サービス「YouTube」のどちらか。そしてその納得の理由とは何か。(イトモス研究所所長 小倉健一)

イーロン・マスク氏による
ツイッターの買収が完了

 電気自動車の米テスラ、ロケットメーカーの米スペースXなど、いくつかの新興企業を率いる世界一の大富豪、イーロン・マスク氏(51歳)。その彼が、米ツイッターを440億ドル(日本円で約6兆4000億円)で買収した。ツイッターの買収資金を調達するために、約130億ドルの負債を背負ったマスク氏は、毎年約10億ドルの利子を払う必要があるという。

 ツイッター買収を巡っては、「表現規制」「表現の自由」について大きな議論が交わされることになった。実際に、その論争は今でも続いている。

 あらかじめ筆者の見解を述べておくが、ツイッターについては「表現の自由」を最大限尊重しても問題ないという立場だ。ただし、それがビジネスにおいて成功するとは限らない。どういうことなのか、順を追って説明していこう。

 そして、その文脈の中でTwitter(社名はカタカナ、サービス名はアルファベットで表記、以下同)とYouTubeの対比を考えたい。「悪質情報の拡散」という観点でTwitterとYouTubeを比べてみると、興味深い論点が浮かんでくる。米国の研究機関であるNYU Stern Center for Business and Human Rightsが2022年6月に出した報告書の内容を紹介しつつ、論じていく。