タタ・モータースは、世界での「タタ・ブランド」の低評価から脱却し、世界で競争力を持てる自動車の開発を目指すために、「知識・情報の集積」「高い技術力」のある英国に研究拠点を設けた。また、英国の自動車メーカー、ジャガーを買収し、「有名ブランド」を手に入れた。ここで重要なのは、タタがジャガーの英国工場をそのまま維持して操業していることだ。

 タタは、エンジンや高品質の自動車部品を「高い技術力」「質の高い労働力」のある英国工場で製造し、インドに送り、インドの工場でそれらを組み立てて、インド、中国などアジア地域に販売している。また、北米・欧州への輸出は、買収後も英国の工場から行っている。要するに、タタは、英国に進出して「有名ブランド」「地理的条件の良さ(欧州、北米に加えて、中東、アフリカ、アジアをカバーできる)」「知識・情報の集積」「高い技術力」「質の高い労働力」を手に入れたのだ。

 そして、タタにとって更に重要だったのが、英国に進出して、「政治的リスクの低さ」を得たことだという。新興国では、政権が安定せず、政変によって政治制度・経済制度が簡単に変わり、企業の財産の没収などが容易に起こりうる。だから、安心してビジネスができる英国に進出したというのだ。

 一方、英国にとって何より重要なのは、インド、中国など新興国など外資の進出によって、国内の自動車工場が廃業に追い込まれずに済んだとうメリットがあったことだ。その結果、英国内の労働者の雇用は維持され、不況に苦しむ英国経済を下支えする役割も果たしているのだ。

(2)外資の研究開発と高品質製造拠点も日本に設置し、国内の雇用拡大につなげる

 一方、日本では、国内の高コスト体質のために製造業が競争力を失い、海外に工場を次々と移している。海外からの日本の製造業買収の動きは、ルノーによる日産の買収などを除けば、皆無である。だが、「地理的条件の良さ(欧州、北米、中東、アフリカ、アジアをすべてカバーできる)」「知識・情報の集積」「高い技術力」「質の高い労働力」「ブランド」「政治的リスクの低さ」という、新興国など外資の英国進出を促した諸条件を、日本も十分に備えている。