【失敗要因その2】経営陣に女性がいない

 二つ目は、経営陣の社歴が長く、女性が一人もいなかったことだ。女性がいないことそのものが問題なのではない。経営陣の同質化が進み、既存の価値観からそれた意見が出にくいのではないかという印象を受けたのだ。だから、今回のアイデアコンテストを開催したのかもしれないが……。

 多様性が社会課題となり、企業のイベントですらスピーカーの男女比率が取り沙汰される中、この企業は外の世界とのギャップを認識し、正しく自己評価ができているのか気になった。

 これは以前、優秀な社員が大量に辞めていく「人材流出企業」で働く人々の覆面座談会を取材した際に、「これだけ市場環境が変化しているのに、それを正しく洞察できない人がリーダーになり、一昔前の成功体験を引きずって戦略を立て、社員をしらけさせている」という指摘が挙がったことを思い出したこともある。

【失敗要因その3】挑戦することが損になる状況

 三つ目は、組織、文化、プロセスが既存事業に最適化されすぎていて、挑戦することが損になる(と社員が感じている)点だ。

 新規事業は失敗に終わることも多い。そのため、多くのアイデアを試し、そこで得られた気付きを生かしながら、さらに良質なアイデアを生み出していく必要がある。しかし、一つの事業アイデアに固執したり、リスクを全てつぶしたりしてからでないと始められない企業は少なくない。この企業にもその傾向が見えた。