店長クラスで年収700万円「カナダのラーメン店」で日本人が働くには?写真はイメージです Photo:PIXTA

2023年10月1日時点で、海外在留邦人の数は129万3565人。朝日新聞の人気連載「わたしが日本を出た理由」は、実際に海外で生活を送る日本人に話を聞き、日本を出たきっかけや現在の暮らしぶりに迫るルポルタージュだ。ワーホリを使ってカナダに渡った森井さんは、英語もままならない状態で出国し、一度は帰国したものの、再び日本を出たという。※本稿は、朝日新聞「わたしが日本を出た理由」取材班『ルポ 若者流出』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

多様な人種が働くカナダのラーメン店で
店長を務める日本人男性

「ラーメン1丁! ギョーザ2皿!」「はいよ!」

 カナダ・トロントで桜が咲きはじめた2023年4月中旬、繁華街にあるラーメン店「KINTON(キントン)ラーメン」では、注文を受けたスタッフの日本語が響いていた。午後8時を過ぎると、40席ほどある店内は、生ビールを片手にラーメンをすする客らでにぎわい出した。ウッド調の内装が施された店内は薄暗く、落ち着いた雰囲気がただよう。

 豚骨の香りがする厨房では、店長の森井廉さん(27歳)が黒色のTシャツに前掛け姿で、手際良く麺を湯切りする。次々と注文が舞い込んでくるなか、慣れた手つきでどんぶりにスープを流し込んでいく。厨房に立ちながらも、一緒にホールやキッチンで働くスタッフ3人への目配りも忘れない。

 森井さんは2022年から、この店の店長として働く。ラーメンをつくるだけでなく、店の売り上げの管理や、20人ほどいるスタッフの指導など、あらゆることを任されている。

 日本らしさを演出するため、注文を受け付ける際の声掛けは日本語を使うが、様々なバックグラウンドを持つスタッフとのやり取りはもちろん英語だ。

「言語の壁はもちろん、育った環境も違います。日本人の感覚でいると、『なんでそうなるんだろうか』とわからないこともあります。以前はスタッフの遅刻もしょっちゅうでした。それでも『だめなことはだめ』と注意したり、褒めたりしながら伝えています」