新型コロナウイルス感染症から回復しても、後遺症の倦怠感やうつ症状に苦しむ人が増えている。WHOでは感染者の1~2割に後遺症が起こる可能性を指摘しており、日本では単純計算で200万~400万人が該当することになる。そんな中、東京慈恵会医科大学の近藤一博教授が、後遺症の原因とメカニズムを突き止め、認知症治療薬「ドネペジル」が症状改善に役立つと発表した。後遺症に悩む人を減らすにはどうしたらいいのか、近藤教授に取材した。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
新型コロナの後遺症問題に注目が集まっている
新型コロナウイルス流行「第8波」の兆しが見える中、後遺症(Long COVID:ロングコビット)の問題が注目度を増している。
厚生労働省が10月14日に出した『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊罹患後症状のマネジメント(第2.0版)』の冒頭では、罹患(りかん)後症状(後遺症)については、いまだ原因やメカニズムなどについて不明な点が多々あることから「医療者も対応に悩み『気のせい』と患者に伝えたり、『自分のところでは診られない』と診療を拒んだり、あるいは患者自身が医療機関を求めて転々とすることが、少なからず生じているようです」と編集委員の岡部信彦氏(川崎市健康安全研究所)が述べている。
患者が置かれている状況は深刻だ。なぜなら、後遺症はその後仕事を続けられるかどうかに大きく影響してくるためである。