事故の教訓は後に生かされた。1988年3月、上越線を走るディーゼル駆動の臨時列車「サロンエクスプレスアルカディア」が新清水トンネル(全長13.5キロ)を走行中、1号車のエンジンから出火したが、トンネルを抜けて停止し、避難したことで死傷者は出なかった。

 一方、課題もまだ残る。2011年5月にはJR北海道石勝線占冠~新夕張間を走行中の特急「スーパーおおぞら」から脱落した部品が、燃料タンクを破損して出火。さらに衝撃で脱線し、トンネル内に停車する事故が発生した。乗務員が指令所とやり取りをしている間に煙が車内に流入。指令の指示もあり車掌は車外への避難誘導を行わなかったが、危険を感じた乗客が自ら非常ドアコックを操作して脱出した。

 結局、39人が病院に搬送されたが、幸い死者は出なかった。さまざまな対策を重ねた現代の車両であっても火災は発生しうること、また、その対応に改善の余地があることが明らかになった事故であった。

 この他、東海道新幹線では2015年6月、新横浜~小田原間を走行中の車内で乗客が持ち込んだガソリンで焼身自殺を図り、発生した煙で28人が負傷し1人が死亡した。同様の事件は2003年2月に韓国大邱(テグ)市の地下鉄でも発生しており、設備や対応の不備で避難できなかった乗客192人が死亡している。

 事故であれ事件であれ、大勢の人が密閉空間に乗り合う鉄道で火災が発生すれば惨事を免れない。他社・他国の教訓も先行して取り入れながら、常に先手の安全対策に取り組んでもらいたい。