「私はなぜこんなに生きづらいんだろう」「なぜあの人はあんなことを言うのだろう」。自分と他人の心について知りたいと思うことはないだろうか。そんな人におすすめなのが、『こころの葛藤はすべて私の味方だ。だ。著者の精神科医のチョン・ドオン氏は精神科、神経科、睡眠医学の専門医として各種メディアで韓国の名医に選ばれている。本書「心の勉強をしたい人が最初に読むべき本」「カウンセリングや癒しの効果がある」「ネガティブな自分まで受け入れられるようになる」などの感想が多数寄せられている。本書の原著である『フロイトの椅子』は韓国の人気女性アイドルグループ・少女時代のソヒョン氏も愛読しているベストセラー。ソヒョン氏は「難しすぎないので、いつもそばに置いて読みながら心をコントロールしています」と推薦の言葉を寄せている。あたかも実際に精神分析を受けているかのように、自分の本心を探り、心の傷を癒すヒントをくれる1冊。今回は日本版の刊行を記念して、本書から特別に一部抜粋・再構成して紹介する。

【精神科医が教える】男女のねたみは異なる? ねたみをポジティブに活かす方法とはPhoto: Adobe Stock

どんなに美しい人にもコンプレックスはある

男性のねたみは大ざっぱで無邪気です。

男性は自分を過大評価しがちで、夢想の影響を受けやすい傾向があります。

そのため、男子ゴルフ界の皇帝であるタイガー・ウッズのドライバースイングや億万長者ビル・ゲイツの財産、プレイボーイとして知られる映画俳優の女性遍歴などをねたむことがあります。

「俺だってああなれたかもしれないのに」と男性にありがちな能天気さを発揮するのです。

一方、女性のねたみは細密で日常的なものが多くなります。
高級レストランや一流ホテルのロビーで、女性の視線はせわしく動き、人が着ている服やバッグのブランドをチェックします。

結婚したら自分と他の既婚女性や、夫と他人の配偶者を比較するようになります。
母親になると、他の子どもが我が子よりも勉強ができることがねたみの原因になります。

私たちは、この世のあらゆるものを手に入れたいと願いますが、そうはいきません。
一時の若さを除けば、どれも手に入れたり維持したりするのが難しいものばかりです。

スタイルや顔立ちも同様です。
どんなに美しいといわれている人でも、本人には必ずコンプレックスがあります。
だから、美容整形外科はいつも大にぎわいです。
ただし手術を受けたとしても、結局すべてに満足することはできないでしょう。

それにもかかわらず、ずば抜けたルックスを持ち、いい学校を出て、就職活動にも成功した人がいると、ねたましく思うことになるのです。

羨望、ねたみ、嫉妬が芽生えるのは、自分にないものを他の人が持っていると知ったときです。
モノだけではなく、長所や競争力、業績、さらには人生目標や夢見る未来までもが攻撃対象となります。

自分がすでに手にしているものを活かす

厳密には、羨望、ねたみ、嫉妬の形はそれぞれちがいます。
羨望はすぐに過ぎ去っていきます。
たとえば、元気にはしゃぎながら通り過ぎていく女子高生を見ながら、「いいなぁ。私にもあんな時期があったな」と若さをうらやましく思っても、その気持ちはしばらくすれば消えるでしょう。

反面、ねたみはすぐには消えません。
他人の成功や幸せが気に入らず、イヤな気持ちになります。振り払おうとしてもなかなか頭から離れません。
「私だってあんなふうになれるはずなのに」という思いによって、ねたましさはリチウム乾電池のように長持ちします。

自分と相手には大差ないという気持ちが、ねたみの発端になります。

たとえば、他社の同業者が自分より月給を100万ウォン(約10万円)多くもらっていると聞いたら、おもしろくありませんよね。
「運がよければ、私だってそうなっていたのに」という思いが頭をよぎります。

逆に、相手との差があまりにも大きい場合は、ねたみは発生しにくくなります。
比べたところでまるで勝算がなく、時間の無駄であることがすぐにわかるからです。

自分が手にしているものを活かそうとせず、他人をねたんで、自分にないものや永遠に手に入れられないかもしれないものに目を向けるのは、人生の浪費です。

少しでも相手の境遇に近づきたい、と本気で望んでいるのなら、うらやましがる程度にとどめて、自分なりの方法で努力していきましょう。
ねたみをポジティブな方向に切り替えるのは簡単ではありませんが、やってみる価値はあります。
変わるために、まずはねたみの正体を探っていきましょう。

(本稿は、チョン・ドオン著 藤田麗子訳『こころの葛藤はすべて自分の味方だ。 「本当の自分」を見つけて癒すフロイトの教え』から一部抜粋・再構成したものです)