膨大な歴史情報をデータベース化し、人類にとって意味あるものとして活用する。そんな壮大な取り組みで注目を集めている株式会社COTEN。同社代表取締役の深井龍之介氏らが手掛けるPodcast番組「歴史を面白く学ぶコテンラジオ(COTEN RADIO)」は今、大きな注目を集めている。著書『世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する歴史思考』では歴史を知り、自分を俯瞰することによって物事の本質を考える「メタ認知」の重要性を提唱している。そしてこの「メタ認知」は私たちがよりも深く、ビジネスに効く。本連載では歴史をどのようにビジネスに生かせばよいのか、その具体例を解説します。連載初回は日露戦争とCOTENの採用活動について。

泥沼の日露戦争から経営のエッセンスを学んだコテンラジオPhoto by Shunsei Takei

 歴史を勉強することの醍醐味は、常に、何かの「発見」があることにあります。

 20万人のリスナーを持つPodcast番組「歴史を面白く学ぶ COTEN RADIO」をプロデュースし、メインスピーカーを務めている僕は、この春に初めての著書、『歴史思考』を出版しました。このお陰で、僕を「歴史の人」として認識している人も多いようです。とてもうれしく、ありがたいことです。

 そんな僕が歴史を勉強しているときに一番おもしろいと感じているのが、「発見」です。

「発見」とは一体、何を指すのか。

 知らなかった歴史的事実を学ぶことももちろん発見です。それをおもしろく感じることも、たくさんあります。歴史的人物の知られざるエピソードに触れたり、ある人物とある出来事の意外なつながりが明らかになることは、とてもおもしろい。

 ですが、僕が最もしびれる「発見」は、自分自身や現在の出来事と、歴史的な事実の意外な共通点が見つかることにあります。例えば、日露戦争と僕が経営する株式会社COTENとの共通点、とか。

 近代日本を揺るがしたエポックメーキング的な出来事でもある日露戦争と、福岡にある生まれてまもないベンチャー企業の株式会社COTENの経営。一見すると、そこに何の共通点も感じられません。でも、日露戦争から僕が株式会社COTENの代表として学ぶべきポイントは実にたくさんあるんです。

 そこで今回から4回にわたって、僕が日露戦争から何を学んだのかについて、ご紹介させてください。

お粗末で場当たり的だった
日露戦争の実情

 日露戦争は、作家・司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』で有名です。幕末から列強の圧力にさらされてきた日本人が、明治維新を成し遂げ、頑張って頑張って大国に勝利した戦争が日露戦争だと理解されています。僕もこうした解釈が成り立つと思っています。近代日本を建て、懸命に戦った先達がいたからこそ、今日の僕たちがいる。そういうふうにも感じています。

 ですが一方で、日露戦争では「もう少し、ちゃんと考えなかったの?」というような出来事が随所で勃発しています。

 当時のロシアは、兵隊の数で日本の2倍、戦費では1.5倍もありました。自分たちの2倍の兵力を持つ国と戦うのは、当然ですが、途方もない勇気がいるでしょう。それだけに、日本軍の首脳はよく対策を考えました。日露戦争における日本軍の作戦と日本政府の外交戦略を見ると、確かにしっかりと考えられた内容ではありました。

 ですが、実際に戦争が始まってみると、現場ではロシア軍を倒すために必要な銃弾が足りなくなるとか、なぜかロシア軍の要塞の「最も防御の固いところ」を攻め続けるといった、あまりにも稚拙な戦術ミスが多発します。

 もともと、ドイツ帝国陸軍を模倣して作った日本軍の指揮系統は大本営をトップとする上意下達の一直線スタイルです。それなのに戦争が始まると、現地には日本軍を統括する満州軍総司令部が発足。現場で戦う兵隊のもとには、日本にある大本営と満州にある総司令部の二つから命令が下りてくる、なんていうお粗末な事態も起こりました。

 それもトップダウンの指揮命令系統を作りながら、開戦当初の作戦が頓挫した途端、「プランB」を用意していなかったので、いきなり「あとは現場の判断で」となし崩し的な権限委譲が起こり、現場は大混乱したそうです。

 すでに確定した歴史的事実として日露戦争を見る僕たちからすると、こうした一つひとつの意思決定や命令、行動はどれもあまりにもお粗末でバカバカしく感じられます。「2倍の兵を持つ国と戦争をするなら、せめてしっかりと情報を収集し、深く分析して、作戦を立てるのは当たり前。どのくらいの砲弾を使うかを計算し、備蓄しておくくらいのことが、なんでできなかったのか」と呆れるのではないでしょうか。僕自身、日露戦争を勉強しているときには何度もそう、思いました。

 僕たちは、コテンラジオの台本を作るときに、調査チームと一緒にディスカッションしながら進めています。日露戦争の台本を検討しているときには、チームメンバーの間で「なんで、こんな当たり前のことができないのか?」「こんなバカみたいな作戦で、何千人もの命が失われるなんて酷すぎる!」と感想を言い合ったものです。「この人たちは、バカなんじゃないか」、と。

 でも僕はここでふと、自分たちの会社の採用活動を思い出したのです。