(1)国民年金の保険料納付期間の延長
現在、国民年金の保険料納付期間は原則として20歳から60歳までの40年間となっている。これを65歳までとして45年に延ばそうという案である。
これに対しては「負担が増える」ということだけが取り上げられており、評論家のコメントの中には“負担は増えるが給付は増えない”というものまで見受けられる。しかしながらこれは大きな間違いだ。
そもそも現在でも60歳を過ぎて国民年金保険料を払っている会社員は多い。なぜなら60歳以降も再雇用制度で65歳まで厚生年金に加入して働いている人が増えているからだ。彼らは厚生年金保険料を払っているので65歳以降に受け取る厚生年金の額は増えるが、基礎年金自体は「経過的加算」などの一部の例外を除くと増えない。
ところが、国民年金の納付期間が65歳までという仕組みが正式に決まれば、状況は大きく変わる。これらの会社員にとって負担は従来と変わらないものの、基礎年金部分は5年間払った分が増えることになる。つまり、60歳以降働く大半の会社員にとっては年金が増えることになる。
では、60歳で仕事を辞めて全く働かなくなった人はどうなるのだろう。現在の国民年金保険料は1年間で20万円弱なので5年間だとおよそ100万円近くとなる。これに対して「老後資金が100万円減る」とコメントする人はいるが、これも大きな間違いだ。
会社を辞めて収入がなくなった人であれば、現在でも保険料は免除される。余裕のある人なら保険料を支払えば将来の年金額は増えるし、それが困難であれば免除申請をすればいい。
また自営業等の人にとっては保険料納付期間が増えることで将来の年金額は増額となる。会社員等に比べて年金額の少ない自営業者等にとって、これは良い制度となる。