眠りをなおざりにしてはいけない
なぜ赤ちゃんたちはこんなに睡眠不足になっているのでしょう。
親は赤ちゃんの基本的な生物学的欲求を満たしたくないのでしょうか。
もちろん、わざと睡眠を奪っているわけではありません。わたしたちも自分の親や昔の親たちと同じように、赤ちゃんには必要とされる以上のものを与えたいと思っているはずです。わたしたちの世代は、赤ちゃんが生まれる前から、授乳や子どもの安全対策、心肺蘇生、離乳食などの講座に出席したり、本を読んだり、むしろ自分の親の世代以上にがんばって、子育てという新しい仕事に取り組む準備をしています。
ところが、赤ちゃんの眠りについて学ぶ機会はほとんどありません。
現代社会では、睡眠はなにもしなくても自然にとれる、または、少なくとも赤ちゃんがよく眠れるようにしたり、睡眠障害を予防したりするために親が手伝えることはほとんどないと考えられています。
赤ちゃんができるだけよく眠れるように親が本腰を入れてとり組まないかぎり、世界中のあらゆる睡眠科学を総動員しても赤ちゃんの睡眠習慣を変えることはできません。
わたしの知っているある母親は、朝、9か月の赤ちゃんと公園で遊んで、昼寝をさせに帰ろうとしたら、同じグループの母親に「うちの子なんて、もう何か月も前から午前中はお昼寝をしなくなったわよ。頭がよくて好奇心が強いから、真っ昼間から横になって寝たりしないの」と誇らしげにいわれたそうです。
昼寝をする赤ちゃんの母親は「昼寝が必要なのは頭が悪いからだといわれたような気分になりました」と話してくれました。
ここに秘められたメッセージは明らかでしょう。睡眠なんて気にしているのは、おもしろみがなくてつまらない、時代遅れの人だけだということなのです。