社会保険料の負担免除分も合わせると
育休中は所得の8割が保障される

 育休取得中の子育て世代の支援策は、社会保険料の負担にも配慮がなされている。

 会社員など、雇用されて働く労働者は、勤務先を通じて、健康保険や厚生年金保険などに加入している。社会保険は応能負担の原則によって成り立っており、給付を受けるためには、所得に応じた保険料を負担する必要がある。被用者は、所得に一定の保険料率を掛けた保険料を労使折半で負担している。つまり、保険料を納めることで、病気やケガをしたときの給付や、老後の年金などを受け取ることが保障されているのだ。

 育児休業中は、この社会保険料が、本人負担分、事業主負担分のいずれも免除されることになっており、勤務先が保険料の免除手続きを行ってくれる。

「保険料を支払わないと、万一の給付が受けられないのではないか」と不安に思うかもしれないが、免除期間中も健康保険の加入資格はそのままで、それまで通りの給付を受けられる。厚生年金保険は保険料を納付したものとしてカウントされているので、将来の年金が減らされることもない。

 社会保険料の免除期間は、産前産後休業中に加えて、育児休業を開始した月から、終了日の翌日が含まれる月の前月までだ。例えば、2月1日~11月30日まで育児休業を取得した場合の免除期間は2月~11月までだが、育児休業の終了日が11月29日だった場合は10月分までが免除期間になる。

 今回、産後パパ育休の導入に合わせて、この保険料の免除要件も見直された。これまでは、同じ月の中に育児休業の開始日と終了日があった場合は、保険料の免除を受けることができなかった。だが、10月1日以降は、育児休業を開始した月に、14日以上の休業日があった場合は、社会保険料が免除されることになったのだ。短期間でも育児休業を利用する人の社会保険料の負担を軽減することで、育休を取得する人を応援していこう、というわけだ。

 育児休業給付金の支給額は、最大でも休業前賃金の67%だが、非課税なので、給付された金額がまるまる手取りになる。さらに、社会保険料の免除分も合わせると、育児休業中に得られる所得は、休業前賃金の手取り額の8割程度となる。

 その金額が多いと感じるか、少ないと感じるかは人それぞれだが、こうした社会保障制度改革が、子育て世代を支援していこうとする国の姿勢の表れであることは確かだろう。

 コロナ禍の影響を大きく受け、2022年の日本の出生数は80万人を割り込み、過去最少を更新する見込みだ。

 子を産み、育てていくために必要なものはお金だけではないが、経済的な負担が軽減されることも重要な要素のひとつだ。これから、子を産み、育てる世代が、安心して子育てができる社会になるように、さらなる子育て環境の整備を期待したい。