少子高齢化だけではない
中国経済の勢いが止まった理由

 中国の危機は少子高齢化だけではない。以前、ダイヤモンド・オンラインに寄稿した『「中国の水問題」が危機的状況、世界的な食糧不足や移民増加の可能性も』でも述べたように、中国では河川水量の激減と地下水などの汚染が進んでおり、今後、深刻な水不足が起き、場合によっては「水飢饉」に発展する可能性がある。

 農業用水と工業用水に不足が起これば、深刻な食糧不足と著しい生産力の低下が同時に起こり得る。水不足が今後、中国の経済成長の一つの足かせになることはおそらく間違いないだろう。

 また、習近平体制になってからの中国は、経済成長において低空飛行を続けている。同じくダイヤモンド・オンラインに寄稿した『中国“一帯一路”失敗だけではない、「バブル崩壊が間近」の理由』で指摘したように、リーマンショックの2008年以降の大型資本注入をはじめとする、大型インフラ投資による無理を重ねた経済成長によって、中国は地方政府の隠れ負債を含めて莫大な負債を抱えているとみられている。不動産バブルが崩壊してそれらの負債が露呈してしまえば、中国経済には大打撃になることは避けようがない。

 中国が高い経済成長を続けられた背後には、上述したように莫大なインフラ投資を続けてきたこと以外に、教育水準が高い割に人件費が低いことを武器に、外国からの投資を集められる環境を整えたことがある。2000年に入ると中国は「世界の工場」として、輸出大国に君臨した。

 中国当局は先進国の中国依存が深まると、今度は中国に有利になる制度を連発して日欧米企業からの技術流出を図った。中国企業は、開発コストをさほどかけず技術を我が物にして製品開発をする「ただ乗り」を行い、低価格の高機能製品で先進国市場を席巻し始めた。

 だが、中国への技術流出が経済的なマイナスになるだけでなく、安全保障の脅威になることに強い問題意識を持ったトランプ政権が2017年に誕生すると、アメリカは中国に対する制裁関税を先鋭化させ、やがて日本などの同盟国にも協力を要請して、保護主義的な政策でアメリカ企業からの技術流出の防止策を進めた。

 特に先端産業において必要不可欠な先端半導体については、中国への技術流出を防ぐことは当然のこと、アメリカの技術を使った先端半導体の製品輸出も禁じたために、中国のイノベーションの勢いは急速にそがれつつある。

 中国当局もアメリカの動きには当初から警戒心を持っており、大型財政を組んで先端半導体製造の内製化を進めた。「中国製造2025」では半導体自給率を2020年に40%、2025年に70%にする計画だったが、結局、2021年に至っても2割にも届いておらず、目標達成は絶望的になっており、先端半導体製造の内製化プロジェクトは失敗に終わっている。

 さらに、先述した水不足のほか、電力不足も今後深刻化していくことが予想されており、それらが始まれば工場投資についても停滞せざるを得ない。地方政府の累積債務が重くのしかかっており、これまで中国の経済成長を支えてきたインフラへの大型投資も難しくなっているなど、今後の中国経済には明るい材料が見いだせなくなっている。